「子ども手作り『ポリ袋防護服』寄贈」が炎上、これを美談にしてはいけない理由



「被災地に千羽鶴」を超える残念な案件を毎日新聞が美談のごとく報じ、当然のように炎上しています。詳細は以下から。


◆子どもらの手作り「簡易防護服」を医師会に寄贈
新型コロナウイルスの感染拡大で医療用防護服の不足が深刻となる中で、兵庫県宝塚市の学校法人「雲雀丘学園」が傘下の幼稚園2園と小・中・高校の児童生徒や保護者らに呼びかけ、ポリ袋などを使って作製した「簡易防護服」を約1400着を宝塚市と川西市の医師会に贈ったことを毎日新聞が報じました。

これは学園の中山台幼稚園の長岡伸幸園長が、身近にあるものを使った簡易防護服作りを「子どもたちや保護者らも参加した学園全体の社会貢献活動として取り組みたい」と提案して行われたもの。

簡易防護服の材料はポリ袋やビニール袋で、はさみや粘着テープなどを使って作ったもの。休園・休校中のため、同学園の教諭の発案で作り方解説動画を製作して配信し、児童生徒らには家庭で作業をして作成しました。これらの簡易防護服は、両市内の病院や診療所などに配布される予定となっています。

◆当然ながら報道は炎上
もちろんこの寄贈を美談であるかのように報じた毎日新聞の記事は炎上しています。その最も大きな理由は、これらの「ポリ袋防護服」はいかなる意味でも防護服ではなく、医療現場で用いられる衛生用品の体をなしていないということ。

3月28日の時点でニューヨークでは防護服の代わりにごみ袋を着用していた看護師が新型コロナに感染して死亡したことが伝えられているように、これでは感染は防げません。


さらに子どもたちが家庭で作っている時点で衛生用品としての品質や清潔さが担保されていないため、医療従事者と患者の双方が感染を含む大きなリスクを負うことになります。

つまりこれは「被災地に贈られた千羽鶴」や「日本兵にささげられた千人針」と同様の無意味なお気持ちでしかない上、実際に人の生き死にの関わる医療現場にリスクをもたらすことを考えれば百害あって一利なしとなります。

◆美談にしてはいけない理由
もちろんこの記事が炎上したのはポリ袋防護服に上記のようなリスクが存在してるためですが、それだけではありません。

子どもたちは現在学校が休校となり、満足な教育を受けられない状態が2ヶ月あまり続いています。教育現場の任務は子どもたちが少しでも勉強できるよう環境を整えることで、決して社会貢献させることではありません。

さらに言えば、防護服をはじめとした必需品の調達は行政をはじめとした大人が責任をもって行うべき仕事。子供には「大丈夫だから心配するな」と負担を掛けないようにしなくてはならないはずです。

そして、報道機関がこうしたエピソードを美談として扱うことで、無用の追随者を生むことになります。実際に防護服が不足している以上、報道機関は不足による影響を詳細に把握し、どのような理由や原因で不足が生じ、解決するには何がネックとなっているのかを提示すべきところ。お涙頂戴の感動ポルノを発信することではありません。

またネット上ではすでに複数の指摘がされていますが、この「ポリ袋防護服」を着用した医療従事者が感染した場合、作成した子どもたちには少なからぬトラウマを残す可能性もあります。

結局このポリ袋防護服は立案した一部の大人の自己満足と、感動ポルノを消費したい一部の大人のためのストーリーでしかありません。

繰り返しになりますが、子供たちに責任を負わせてはいけません。それは大人が負うべきものであり、子供たちには責任をしっかり負っている姿を見せて安心させるのが大人の役割のはずではないでしょうか。

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