「歴史的緊急事態」のはずの新型コロナウイルスへの対応で、まさかの議事録なしという珍事に陥っています。
3月には西村経済再生相が記録を残すことを国会で明言していましたが、何が起こっているのでしょうか。詳細は以下から。
◆議事録作成が義務付けられた「歴史的緊急事態」のはずが…
新型コロナウイルス感染症の対策を検討してきた専門家会議の議事録を政府が作成していないことが5月28日に報じられ、大きな衝撃が走りました。
政府は3月10日に新型コロナウイルスへの対応を公文書管理法のガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に指定しており、これによって政府が政策決定などをした会議の日時や出席者、議事録、配布資料などの記録を義務付けられています。
◆新型コロナウイルス感染症対策専門家会議とは?
ここで新型コロナウイルス感染症対策専門家会議とはどのような存在か、おさらいしておきます。首相官邸公式サイトの「新型コロナウイルス感染症対策本部」によると
新型コロナウイルス感染症対策本部の下、新型コロナウイルス感染症の対策について医学的な見地から助言等を行うため、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下「専門家会議」という。)を開催する。
(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の開催についてより引用)
となっています。なお「新型コロナウイルス感染症対策本部」自体は安倍首相を本部長とする内閣の対策本部です。
中華人民共和国で感染が拡大している新型コロナウイルス感染症について、感染が拡大している現下の状況に鑑み、政府としての対策を総合的かつ強力に推進するため、内閣に新型コロナウイルス感染症対策本部(以下「本部」という。)を設置する。
(新型コロナウイルス感染症対策本部の設置についてより引用)
つまり、安倍首相が司る新型コロナの対策本部に医学的な助言などを行うための専門家集団ということになります。
◆西村経済再生相も「しっかりと記録を残したい」と明言
西村経済再生相は3月17日の参院予算委員会で「内閣官房が担当する連絡会議、課長級会議、関係閣僚会議、対策本部、幹事会、専門家会議はしっかりと記録を残したい」と明言しており、この発言が反故にされていたことになります。
なお、これは立憲民主党の石橋通宏氏が安倍首相や担当閣僚らが新型コロナ対策などを話し合う政府の連絡会議が議事録作成の対象になるのか質問した際の答弁です。
野党側は実質的に連絡会議で基本方針を決めていると指摘。これに西村経済再生担当相は「意思決定に至る過程を検証できるよう文書を作成するとされている。適切に(記録を)残していきたい」とし、1月下旬以降に開いた連絡会議の記録も「さかのぼってしっかり残したい」と語っています。
◆検証も将来的な参照も不可能に
「歴史的緊急事態」にまで指定された新型コロナウイルスに政府がどのような対策を行ったかを示す議事録は、将来パンデミックが発生した際に参照すべき貴重な資料となるはずのもの。
同時に今回のパンデミック対応のいわゆる「日本モデル」の是非や効果を検証するための一次資料でもあり、これはいわば「セーブデータが吹っ飛んだ」状態です。
まさかとは思いますが、ここで「記録を残すとは言ったが議事録を作るとは言っていない」というご飯論法が展開されることになるのでしょうか。
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