一度は民意によって葬り去られたはずの検察庁法改正案がゾンビのように復活です。詳細は以下から。
菅内閣の上川陽子法相が9月16日夜の就任記者会見で、国民の広範な反対の中で成立断念に追い込まれた検察庁法改正案を再提出する考えを明らかにしました。
上川法相は「改正部分にさまざまな意見があったと承知している。それを踏まえ、関係省庁と協議し、再提出に向けて検討したい」と語っており、再提出にあたって何らかの修正が加えられる可能性がありますが、具体的な内容については言及されていません。
◆「検察庁法改正案」おさらい
このニュースを共同通信社は検察庁法改正案を「検察官の定年延長を可能とする」ものと表現していますが、これは極めて不正確なもの。ではいったいどういったものだったのか、内容をおさらいしてみましょう。
検察庁法改正案にはたしかに検察官の定年延長も含まれていましたが、批判されたのはこの改正案が「内閣が認めさえすれば63歳を超えても検事総長や検事長といった役職で続投できるうえに、65歳になっても同様に定年を延長して続投できるようになる」ため。
つまり、これは単なる検察官の定年延長の話ではなく、内閣に都合のいい検察トップをいつまでも在任させることを可能とする「勤務延長」が盛り込まれていたためです。
そもそもこの改正案は「官邸の用心棒」と異名を持ち、菅総理大臣らとも深い繫がりを持っていた黒川(元)検事長を再任させるためのものでした。
事の発端は2020年1月31日、安倍政権が2月8日に63歳となる黒川検事長の定年を8月まで半年間延長することを閣議決定したことに始まります。
検察庁法では検事総長の定年が65歳、高検検事長を含む検事の定年を63歳と定めていたものの、安倍政権は法解釈を突然、前代未聞の「口頭決裁」で変更した上で閣議決定してしまったのです。
これにはさすがに野党や法曹界から大きな批判を受けたため、内閣の判断で検察幹部の役職定年を延長できるようにし、黒川氏の定年延長の「後付け合法化」させるために提出されたのが検察庁法改正案だったという流れです。
この改正案には多くの著名人を筆頭に国民から反対の声が吹き荒れ、ツイッターではハッシュタグ「 #検察庁法改正案に抗議します 」が1日で470万件を超えるツイートを叩き出すなどし、結果的に成立断念に追い込まれることとなりました。
今回の上川法相の再提出の発言ではどのような修正が行われるかは明言されていません。
2019年時点の「察官の定年を65歳に引き上げるものの、63歳に達した後は検事長や検事正といった要職には就けない」というシンプルなものに戻るのか、それとも「勤務延長」に関わる内容が再び盛り込まれるのか、注視していく必要がありそうです。
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