この問題、すでに日本国内にとどまらず、サイエンスやネイチャーといった世界的な科学誌や一流メディアでも物議を醸しています。
日本国内ではデマによる学術会議への攻撃まで行われている状況ですが、海外からはどのように映っているのでしょうか。詳細は以下から。
◆サイエンス
アメリカ科学振興協会が発行し、世界で最も権威のある学術雑誌であるサイエンス誌は「日本の新首相は日本学術会議との闘争を選んだ」という記事を掲載し、学問の自由の侵害であるという研究者らの主張を取り上げています。
記事では6人の人文・社会科学系の学者がこれまでの慣習を破って任命拒否されたことを伝え、菅首相が拒否の理由を説明しなかったと指摘。加えてこの6人が菅首相が官房長官を務めた安倍政権の政策を批判していたという事実を紹介しています。
日本科学者会議の井原聰事務局長による、任命拒否が「違法」であるというステートメントにも触れており、政権を批判した学者を法を超えて排除しようとする政府の姿勢を浮かび上がらせています。
◆ネイチャー
サイエンス誌と並び世界的に高い権威の学術雑誌、イギリスのネイチャー誌は「ネイチャーが今こそ政治を取材しなければならない理由」という記事を掲載し、新型コロナのパンデミックという緊急事態の中で科学と政治の関係性がより重要になる一方、学術的な自治が脅かされていることを指摘。
その中の例として、独立した組織であった日本学術会議が政府による任命が行われるようになって初めて、政府の政策を批判した6人の学者が排除されたことを伝えています。
◆ル・モンド
フランスの一流紙「ル・モンド」も「日本の首相が知的世界と戦争」という記事を掲載。
冒頭から「日本の菅新首相は批判的な声がお嫌いのようだ」と入り、日本学術会議が推薦した候補のうち6人が前代未聞の任命拒否にあったことを伝えます。
その上で菅首相がその分野では極めて著名な候補たちを排除するにあたってほんの少しも理由を説明していないこと、そしてノーベル賞学者の同会議現会長の任命拒否撤回と説明の要請を加藤官房長官が実質的に拒んだことも指摘しています。
◆フィナンシャルタイムズ
イギリスの経済紙「フィナンシャルタイムズ」はこの件を「日本学術会議スキャンダルが菅政権の蜜月時代を脅かす」という単独記事で大きく取り上げています。
すでにこの問題を菅政権の最初のスキャンダルと認識しており、これによって政権開始時の蜜月時代が終わるリスクがあり、また(パンケーキなどで)ソフトイメージを植え付けようとしていた菅総理の「非情な黒幕」という評判が明るみに出るだろうとしています。
加えて、世論調査で過半数が任命拒否が間違いだったと回答していること、6人の学者らが安倍政権時代の安保法制や共謀罪に反対していたことを上げ、また加藤官房長官がこの任命拒否を合法だと言い張っていることにも触れています。
◆ロイター通信
イギリスのロイター通信も「日本の菅政権、学術会議の任命拒否の弁明に非難」としてやはりスキャンダル扱い。
就任直後に高い支持率を誇っていた菅政権が、安倍政権の政策を批判した学者らを任命拒否したことで大炎上を引き起こすだろうとしています。
ということで、いずれも政治の学問への介入であり学問の自由への脅威であると扱っており、その理由も自身が官房長官を務めていた安倍政権の政策への批判が原因と指摘。メディアはこれに加えて政権を揺るがすレベルのスキャンダルとして見ています。
このまま任命拒否が押し通されれば「日本には学問の自由がない」と目されることになり、海外からの優秀な学生や研究者が日本で働く機会はさらに減ってしまう可能性もありそうです。
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