【コラム】コロナ禍中の「国境離島旅行に5000円補助」がもたらす危険すぎる領土危機



今このタイミングで離島に観光客を積極誘致することが何をもたらすのか。場合によっては破局的な結果をもたらす可能性もあり、領土危機にも直結します。詳細は以下から。


◆政府が国境離島旅行に5000円の補助を検討
政府が長崎県・対馬などの「特定有人国境離島地域」に指定されている15地域・71島への旅行に対し、1人1泊5000円の支援策を検討していることを産経新聞が報じています。

支援策ではツアーを企画する旅行会社などを経由して5000円分の割引を受けられる形を想定。例年実施してきた交付金制度による支援とは異なり、ダイビングツアーなどを盛り込むといった条件を撤廃。


さらに来年6月まで延長方針の「GoToトラベル」とも併用できる仕組みにする方針とのこと。確実にこのコロナ禍の最中に実施することが前提とされており、第3次補正予算案に盛り込まれる予定です。

離島では観光業が主要産業のケースが多く、当然ながら新型コロナで客足は減少しています。政府はGoToと併用させることで離島観光を促進し、地元経済の下支えを図る狙いがあります。

◆離島の生活・経済保全は領土保全という考え
これに加えて離島の無人化を防ぎ、領土保全を強化する意味合いもあることを産経新聞は指摘します。

今回対象となる「特定有人国境離島地域」の15地域71島は国境近くの離島振興を目的に成立した「有人国境離島法」に基づいて指定されたもので、中国の進出が報じられる東シナ海のトカラ列島や韓国との国境に接する対馬などが含まれています。


離島には無人島が多く、住民のいる島でも少子高齢化などで過疎化が著しく進んでいます。記事内で政府関係者が「人が島で社会生活を営んでいることは領土・領海保全の意味では、非常に重要だ」と指摘しているように、離島の経済と生活を守ることが領土保全に直結するというのが政府の考え。

ですが、もしそうなら今この「国境離島旅行に5000円補助」の実施は完全に逆効果となります。

◆脆弱な離島医療を崩壊させれば逆効果に
いまさら指摘するまでもありませんが、ほとんどの離島の医療体制は極めて脆弱です。例えば今年4月に石垣島で初の新型コロナ感染者が発生した際は、感染症病床が3床しかありませんでした

また、現在島民の50人にひとりが感染している北海道の奥尻島では、対岸の江差町の病院での受け入れも限界が近づき、すでに一部の患者が函館市などに搬送されている状況です。

つまり、より人口が少なかったり、本土までの搬送に時間のかかる離島で感染者が発生すれば、対応が人材、機材両面で極めて困難であることは火を見るよりも明らか。

もともと離島では高齢化が都市部よりもはるかに進んでおり、高齢者が旅行者と接触して感染すれば重症になる可能性も当然高くなります。


加えて離島の病院や診療所が新型コロナに対応するならば、そのあおりで通常の診療や治療が困難となり、急な事故や持病を持つ人への対応に手が回らなくなるケースも十分に考えられます。

またGoToトラベル利用者の発症が2倍になっていたという東大チームの調査も報告されており、GoToだけでなくさらなる割引を行えば離島での感染リスクはさらに高まることに。

「人が島で社会生活を営んでいること」が領土保全に繋がるのであれば、過疎化と高齢化の進む離島の住民の感染リスクを増大させ、医療崩壊を招くこの支援策は短期的にも中長期的にも完全に逆効果となります。

本当に離島の経済や生活を考えるのであれば直接補助を行えばいいだけの話ですが、敢えてGoToのような「旅行会社などを経由」させての補助案を選ぶ理由はどこにあるのでしょうか。

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