「待遇格差改善のため、正社員の休暇減らす」日本郵政の提案が「同一労働同一賃金」の目的に完全逆行



これが同一労働同一賃金の実現方法のスタンダードになると、働くすべての人にとって厳しい時代となりそうです。詳細は以下から。


◆待遇格差改善のために正社員の待遇悪化
日本郵政グループが、正社員と非正規雇用者の格差を減らすため、正社員の休暇を減らす提案をしていたことを朝日新聞社が報じています。

これは2020年10月の最高裁判決で「正社員と非正社員の待遇に不合理な格差がある」と認定された労働条件の改善を目指すもので、提案は夏期・冬期の有給休暇と年始の祝日給、さらに有給の病気休暇の3点について行われました。

現在夏冬の有休は正社員で夏・冬に3日ずつ、アソシエイト社員で1日ずつながら期間雇用社員はゼロ。提案では期間雇用社員に夏冬1日ずつ与える代わりに正社員は2日ずつに減らすとしています。

年始の祝日給では正社員の割り増し分を廃止し、年始勤務手当を正社員・非正社員ともに増額。有給の病気休暇はアソシエイト社員にも15日与えるものの正社員も含めて31日以上の療養が必要な病気に限ることに。

提案に対して日本郵政グループ労働組合は議論を始めているとのこと。

◆同一労働同一賃金は「非正規雇用者の待遇改善」のためのはずが…
本件は政府の推進する「同一労働同一賃金」に関するもので、厚労省のサイトでは以下のように説明されています。

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

同一労働同一賃金特集ページ |厚生労働省より引用)



加えて「同一労働同一賃金ガイドライン」には、格差解消は非正規雇用者の待遇改善が目的だと明記。

短時間・有期雇用労働法及び労働者派遣法に基づく通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の不合理と認められる待遇の相違の解消等の目的は、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者の待遇の改善である。

同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)より引用)


日本郵政の提案は待遇の悪い側の底上げの代わりに、良い側を落とす本末転倒と呼べるもの。

日本有数の巨大企業の同一労働同一賃金対策として「正社員の待遇悪化」が認められれば、今後追随する企業が続出する恐れもありそうです。

そうなれば正社員と非正規雇用者が感情的にも分断され、労働環境は賃金や待遇とは別の意味で悪化することにもなりかねません。

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