EV拡大にさらなる逆風も、モーター用電磁鋼板が長期供給不足に



普及に向けた流れが進むほど、必要な材料の不足も加速する事態となっています。詳細は以下から。

EV(電気自動車)などのモーターに使用する電磁鋼板の供給が、2025年以降に不足する可能性を日本経済新聞社が報じています。

これは世界的に拡大が続くEV販売に対して鉄鋼メーカーの供給が追い付きそうにないため。EVを開発する各社には半導体不足やバッテリー用のリチウムやコバルトに続く新たな部品供給網のリスクとなる可能性があります。

電磁鋼板の中でも、全方向で優れた磁気特性があり、主にモーターに使用される無方向性電磁鋼板はEV普及に重要で、各鉄鋼メーカーは増産計画を発表しているものの需要に見合う供給は難しいとのこと。

EV向けの無方向性電磁鋼板の世界需要は2020年に32万トンだったところが、2027年に250万トン強、2033年には400万トンを超えるとされています。

英調査会社IHSマークイットによると、2025年以降に供給不足となり始め、2027年に35万トン超、2030年には90万トン超が不足する可能性があるとのこと。


またEVの拡大に伴って充電インフラの拡充計画も各国で進んでいるため方向性電磁鋼板の需要も急増する見込み。これは無方向性電磁鋼板の製造設備と共通しているため、熾烈な供給の奪い合いになる可能性を日経は指摘しています。

もちろん「2030年には年350万台のEVを販売」とぶち上げたトヨタにとっても、この供給不足は大きな問題です。

日本製鉄が2021年10月、トヨタ自動車と中国・宝山鋼鉄が無方向性電磁鋼板の特許を侵害していると提訴した件は驚きをもって迎えられましたが、極端な売り手市場となればEVの価格自体にも影響することが考えられます。

SDGsの名の下に世界的に推進されるEVですが、その世界的推進そのもののが物不足を招き、推進を妨げるというジレンマが生じています。

本件はコロナ禍などによる一時的なものではなく、10年単位の不足となることが必至。他産業への影響も十分考えられそうです。

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