今や名前だけは広く知られている暗号資産(仮想通貨)のビットコイン。
今や楽天ウォレットなどのアプリからも取引ができ、身近な存在になりつつありますが、国が通貨に定めるにはまだ早すぎたのかもしれません。詳細は以下から。
中米の小国、エルサルバドルがビットコインを法定通貨とすることを決めたのは2021年6月のこと。
経済危機に悩まされるブケレ政権が提出した「ビットコイン法」が6月8日に国会で賛成多数で可決。90日後の9月7日から法制化され、同国は世界初の暗号資産を法定通貨とした国となりました。
この法定通貨化は世界中で「奇策」とされ失敗が予見されていましたが、大方の予想どおりエルサルバドルの経済が浮上する気配はなさそうです。
導入理由としてブケレ大統領が挙げたのが、国内総生産(GDP)のほぼ1/4を占める海外からの送金です。貧困国であるエルサルバドルでは米国などに「出稼ぎ」に出る人々が多く、彼らから親族への送金が極めて重要な資金源となっています。
この際の送金手数料がビットコインを用いれば年間計約4億ドル(約455億円)節約できるというもので、これは経済規模から考えれば極めて大きな額となります。
加えて国民の7割が銀行口座などの金融サービスにアクセスできないことも挙げており、ビットコインを銀行不要の金融サービスとして捉えていることが分かります。
ですが導入初日となる9月7日、ビットコインは約5万2000ドルから約4万4000ドルまで急落するという幸先の悪いスタートを切ることに。
また政府の開発したビットコイン用アプリ「CHIVO(チボ)」も導入直後から不具合が続出。10月半ばまでにアプリで個人情報が盗まれたとする届け出が700件以上に上り、検察が調査を開始する事態となりました。
そもそもエルサルバドル人の4割程度がスマホを保有しておらず、ネット環境が劣悪な人も4割程度に及ぶため、ビットコインへのアクセスに大きな格差も発生。金融サービスへの格差がスマホやネット環境の格差に置き換わったかたちです。
加えて価格変動の極めて激しいビットコインは銀行への貯金のような貯蓄のための通貨としては非常に不安定なもの。
こうした事情から国民の多くはビットコインを信用せず、取引で使っても速やかにもうひとつの法定通貨の米ドルに両替するケースが相次いでるのが現状です。
その際にも両替のできるATMなどまで足を運ぶ必要があり、引き出す際には手数料も発生。コインベースなどの取引手段を使っても2~4%の手数料を取られるため、結果的に恩恵は小さなものとなります。
こうした諸事情からエルサルバドルの国家信用度を表すソブリン格付けは大きく下落。同国の国債価格も75セントから63セントに急落し、今では36セントとなっています。
ブケレ大統領は2021年12月には10億ドル(約1140億円)のビットコインに裏付けられた10年債をもとに計画都市「ビットコインシティー」の建設をブチ上げましたが、このビットコイン債も早々にジャンク債の格付けを受けています。
果たしてこのビットコインシティーが現実世界にそびえ立つ日は来るのか、それとも絵に描いた餅で終わるのか、現状からはかなり厳しい見通しとなっています。
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