厚労省の見解によると、日本では女性のリプロダクティブ・ヘルス&ライツを「妊娠させた男性」が握ることになります。
経口中絶薬の服薬、配偶者同意が必要と厚労省見解
神奈川新聞社の報道によると、厚生労働省が5月17日の参院厚労委員会で、外科処置なしで人工妊娠中絶できる「経口中絶薬」の投薬や服薬に配偶者の同意が必要であると明言しました。
これは社民党の福島瑞穂党首の質問に橋本泰宏子ども家庭局長が答えたもの。
福島氏は「人工妊娠中絶の高額な手術費用や男性側の同意を得るとの条件が、望まない妊娠への対応を阻んでいる。新生児遺棄などの痛ましい事件を防ぐために経口避妊薬は有効だ」として早期承認を求めました。
これに対し、橋本局長は母体保護法を根拠に「服薬での中絶でも配偶者同意は必要だ」と答弁し、「強制性交などによる妊娠については考慮し対応していく」と付言。
福島氏は「配偶者同意が必須なら(薬が)承認されても現状と変わらない。厚労省も推進を担うリプロダクティブ・ヘルス&ライツに反する」と批判。
その上で「女性の権利を守る視点から必要な対応をとってほしい」と母体保護法の改正などを求め、「薬価も手術費と同じようなレベルにしないでほしい」としました。
リプロダクティブ・ヘルス&ライツに反すると批判
なお厚労省の答弁によると、2021年12月に英国の製薬会社から経口中絶薬2種類の日本国内での使用認可を求める申請があり、承認されれば国内初となります。
経口中絶薬の使用目的は、女性の妊娠中絶の負担を身体・精神の両面から軽減することとされてきました。
あくまで配偶者の男性の同意を必要とする厚労省の見解は、女性の重要な人権である「性と生殖に関する健康と権利」を意味するリプロダクティブ・ヘルス&ライツに反するとの批判を浴びています。
現時点での厚労省の見解では、配偶者のいない状態での妊娠中絶に対して誰の同意を得る必要があるのか、また強制性交などによる妊娠への考慮が実際にどのようなものになるかは不明です。
この見解のままでは、経口中絶薬が承認されても日本の女性は自身の性と生殖の権利を「妊娠させた男性」に握られたままになる可能性が濃厚といえます。
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