過重労働の制限への意義ある一歩です。詳細は以下から。
厚生労働省は2020年にも従業員の残業時間の公表を大企業に義務付けることを決めました。
対象となる企業は月当たりの平均残業時間を年1回開示することを求められ、従わなければ処分を受けることとなります。これによって企業の労働実態を外部から見えやすくし、過度な長時間勤務を未然に防ぐ狙いがあります。
この新たな規制は労働法制で大企業とみなされる従業員数301人以上の約1万50000社が対象となり、従業員300人以下の中小企業については罰則を伴わない「努力義務」にとどめる方針です。
対象となる大企業は、厚労省が企業情報をまとめたデータベースや企業のホームページで年1回開示することを求められます。虚偽が疑われるような情報しか出さない企業にはまず行政指導を実施した上、悪質な場合には最大20万円のペナルティーが科されます。
もちろん大企業にとって20万円は痛くもかゆくもありませんが、「虚偽の残業時間しか出さず、行政指導されても改善されないブラック企業」というお墨付きが付くことになります。
厚労省は残業時間の公表によって、企業が業界他社を互いに意識し合ったり、時間外労働を減らす新たな動機づけになったりすると考えており、これによって職場の生産性が高まる効果が期待される上、学生が就職活動で企業を選ぶ際の判断基準としても活用できそうです。
日経新聞はこの決定を報じる記事の中で
企業にとっては労務管理の事務が増えることになり、労政審では経営側から慎重論も出そう。残業時間を他社と並べて相対的に比べられることへの心理的な抵抗もある。
などと経営陣の心中を慮っていますが、労務管理の事務の増加は微々たるものであり、生産性が高まって残業時間が減少するようになれば簡単に相殺できるもの。他社と残業時間を比べられて嫌な思いをするのであれば、残業をしなくて済むように環境を整えるのが経営陣の役割であり、心理的抵抗などに配慮する必要はありません。
日経新聞の以下の「ここまでやるのか、という声が聞こえてきそうです」というツイートに対しても、「むしろやるべき」「これだけじゃたりない」といったリプライが付けられています。
なんと。厚労省は大企業に残業時間の公表を義務付けます。ここまでやるのか、という声が聞こえてきそうです。https://t.co/PMvBWXxlgK
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) 2017年5月17日
実際的な問題としては、正社員と非正規社員を分けるかどうかなど詳細な仕組みの議論がこれからということで、非正規社員が公表対象外となればそちらに大きなしわ寄せが来る可能性があるということ。
さらには実際の残業時間としてカウントされない、いわゆる「サービス残業」とされる違法な無賃労働の強制が横行する可能性があるということ。
抜け道があれば、その抜け道によってこれまで以上に苛烈な過重労働や違法な無賃労働を強いられる人が発生する可能性があるため、しっかりと対応策を取らなければなりません。
また、残業時間の公表が努力義務とされる中小企業にしても、大企業の下請けとして「残業の肩代わり」をさせられることのないよう、こちらも抜け道を作らないように留意する必要があります。
大企業の残業時間、公表義務付け 厚労省が20年メド:日本経済新聞
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