好景気に沸き返る日本ですが、その長さが「いざなぎ景気」を超えて戦後2番目の長さという大台に達しました。戦後最長の好景気にリーチが掛かったことになります。詳細は以下から。
◆現在も続く好景気、戦後2番目の長さに
日経新聞によると、内閣府が12月13日に第2次安倍政権が開始した2012年12月を起点とする景気回復の長さが2017年9月時点で高度経済成長期の「いざなぎ景気」を超えた事を正式に認定しました。
これで現在まで続く景気回復の長さは戦後2番目となります。肝心の今回の景気回復は現在も続いており、戦後最長に文字通りリーチが掛かりました。
いざなぎ景気は57カ月間ですが、これを超える58カ月の景気回復の起点は安倍首相が2度目の内閣総理大臣に就任してアベノミクスを開始、日銀が異次元緩和を始めた時期と重なります。
まさに安倍政権の登場と共に戦後2番目の好景気が始まり、現在も続いている事になりますが、この好景気が2019年1月まで続けば戦後最長の74カ月となります。
◆GDPは年率2.5%減に下方修正も「好景気」「経済成長」
なお、内閣府が12月10日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)の改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%減、年率換算では2.5%減となっており、速報値(前期比0.3%減、年率1.2%減)から大きく下方修正となりました。
ただし、この下方修正に麻生財務相は「景気が悪くなってきているという感じではない」と好景気が今も継続しているという認識を示しています。
麻生財務相は4月にも「政権の安定があったからこそ、これまでの経済成長がずっと継続性を持たせられたのは間違いない事実であって、5年前より今の方が悪いという人は、よほど運がなかったか、経営能力に難があるか、なにかですよ」と発言しており、経済成長がずっと続いてきたとの認識を示しています。
◆しかし8割の日本人は景気回復を実感せず
ですが今回のGDPと政府認識の齟齬が示すように、実に日本国民の8割が景気回復を感じていませんでした。
2017年12月に朝日新聞社が実施した全国世論調査では、景気がよくなったかどうかの実感を尋ねたところ、景気の回復を「あまり」と「まったく」を合わせて「実感していない」人の割合は82%にも上っています。
一方で景気回復を「ある程度実感している」は15%、「大いに実感している」は1%に留まっています。つまりは「よほど運のなかった」人が8割を超えていました。
また内閣府が2018年3月に実施した消費動向調査を見てみても、暮らし向きが「良くなる」「やや良くなる」と回答した人は1月で合計7.7%でしたが2月には6.4%、3月には5.9%とじわじわ減少していることが分かります。
さらに2018年9月1日と2日に行われたJNN世論調査でも「景気回復の実感はある?」という項目で「アベノミクスと呼ばれる安倍政権の経済対策によって実際に収入が増えるなどあなたは、景気回復の実感がありますか、ありませんか」という質問に「実感がある」と答えたのはわずか11%。
なんと84%もの人が「実感はない」と回答しており、デフレ脱却の鍵を握るはずの個人消費の冷え込みがこの上なくよく分かる結果となりました。
◆世帯収入の中央値も22年前のピークの3/4に
この実感を裏付けるように、バブル崩壊後の1995年に世帯収入の中央値はピークの550万円を記録していたものの、それから22年間で122万円減少しています。これは22%超の減少ということで、およそ3/4になったということ。
“今の景気はいざなぎ超え” でも、世帯収入の中央値は32年前とほとんど変わっていません。詳しくはこちら↓https://t.co/3sr9T2mwm3 #nhk_news pic.twitter.com/wVlmxqziCq
— NHKニュース (@nhk_news) 2017年9月25日
中央値は21世紀になって500万円を割り込み、リーマン・ショックの2008年には427万円まで低下。その後民主党政権になって東日本大震災があったものの2012年までは432万円で維持していました。
しかし安倍政権が2012年12月に誕生し、2013年の中央値は415万円へと落ち込みます。2014年は427万円、2015年は428万円と微増しますが、3年経っても東日本大震災後の民主党政権最後の年のラインに戻すこともできていません。
これを裏付けるように、経済協力開発機構(OECD)は物価の影響を除いた各国通貨ベースでの実質賃金が、G7うち日本だけが2000年よりも低い水準に留まっていることを指摘しています。
◆政府の言う「好景気」の正体とは?
ではいったい、この日本のどこに好景気があるのでしょうか?日経新聞は2018年1月の記事で「大企業の賃上げ率は4年連続で2%を超える」とし、「上場企業は18年3月期に2年連続の過去最高益を見込む」事を報じています。
そして財務省が9月3日発表した2017年度の法人企業統計によると、企業の蓄えた「内部留保」に相当する利益剰余金が、金融・保険業を除く全産業で前年度比9.9%増の446兆4844億円となって過去最高を更新しました。
内部留保が過去最高となるのは、第2次安倍晋三政権が発足した2012年度以降6年連続。製造業は9.1%増の153兆3205億円、非製造業は10.4%増の293兆1639億円で、ともに1割近く拡大しました。
そう、この内部保留の過去最高額連続更新が「いざなぎ越えとなる戦後2番目の長さの好景気」が始まるのと軌を一にしていることが明確に分かります。
そして、同時に企業の稼ぎを人件費に回した割合を示す「労働分配率」は2016年度の67.5%から2017年度は66.2%に下落。この割合はバブル期にも及ばず、43年ぶりの低さとなりました。
結局のところアベノミクスの6年間では、企業は大儲けしながら焼け太り、トリクルダウンは発生せずに国民の8割以上が不景気の中で苦しみ続けるという構図が強化され続けてきたことになります。
ということで、「いざなぎ越えとなる戦後2番目の長さの好景気」がいったいどんなものなのか、誰にとっての好景気かを考える時、この6年間にわたって繰り広げられてきたアベノミクスがどこを向いて、誰のために行われてきたかも自然と理解できるのではないでしょうか?
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