企業の内部留保が446兆で過去最高→労働分配率は43年ぶりの低水準



国民の8割以上が景気回復を実感できない理由がよく分かります。詳細は以下から。


◆第2次安倍政権発足以降6年連続で内部保留は過去最大を記録
財務省が9月3日発表した2017年度の法人企業統計によると、企業の蓄えた「内部留保」に相当する利益剰余金が、金融・保険業を除く全産業で前年度比9.9%増の446兆4844億円となって過去最高を更新しました。

内部留保が過去最高となるのは、第2次安倍晋三政権が発足した2012年度以降6年連続。製造業は9.1%増の153兆3205億円、非製造業は10.4%増の293兆1639億円で、ともに1割近く拡大しました。

◆一方で労働分配率は43年ぶりの低調
ですが、企業の稼ぎを人件費に回した割合を示す「労働分配率」は2016年度の67.5%から2017年度は66.2%に下落。この割合はバブル期にも及ばず、43年ぶりの低さとなりました。


業績が高水準であっても、政府からの賃上げ要請にも企業側が応じずに溜め込み続けている構図が明らかになっています。

◆当然ながら国民は景気回復を実感できず
9月1日と2日に行われたJNN世論調査では「景気回復の実感はある?」という項目で「アベノミクスと呼ばれる安倍政権の経済対策によって実際に収入が増えるなどあなたは、景気回復の実感がありますか、ありませんか」という質問に「実感がある」と答えたのはわずか11%。

なんと84%もの人が「実感はない」と回答しており、デフレ脱却の鍵を握るはずの個人消費の冷え込みがこの上なくよく分かる結果となりました。


結局のところアベノミクスの6年間では、企業は大儲けしながらもトリクルダウンは発生せず国民の8割以上が不景気の中で苦しみ続けているという構図が強化され続けてきたことになります。

なお、当然ながら法人税減税を埋め合わせる形で行われてきている消費税増税がこの傾向に拍車を掛けてきたことも改めて指摘するまでもありません。

◆日本の景気はこうすれば回復する
ただでさえ人口減少社会となった日本では今後消費は減少していくことが考えられますが、利益が企業内部で膨れあがって従業員ら「個人」に還元されなければ消費は増加しません。

経費削減のために正社員を減らして低賃金・劣悪待遇の非正規雇用を増やすことで目の前の利益は増加するかもしれませんが、企業が気付くべき大切なことは「労働者=消費者」であるという資本主義の基本のキです。

企業で働く労働者が十分な賃金と将来を見通せるレベルの安定した雇用環境を得られなければ、個人消費が回復することはありません。


特に現在低賃金・劣悪待遇に置かれている低所得者層へのテコ入れは必須。食品や消耗品などの消耗品や病院への通院といった日常生活に支障をきたしている層の賃金や待遇が改善されれば、それはそのまま消費に直結します。

大企業が内部保留を吐き出し、「下請けいじめ」と呼ばれる搾取を止め、下請けや孫請けの末端の労働者にまで賃金とホワイトな職場環境が広がれば、それだけ「金と時間を持った消費者が増える」という当たり前の話でしかありません。

「金は天下の回りもの」という言葉の意味をもう一度考え直すべき時期なのではないでしょうか?

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