【コラム】京都で30代4人家族が「普通の生活」するのに48万円？内訳を調べてみました

毎日新聞の掲載した「京都市在住、30代の4人家族…「普通の生活」に月48万円必要教育費と車の維持費重く」という記事が大きな反響を呼んでいます。

48万円なんて贅沢、もっと節約できるのではないか、といった声も上がっていますが実際はどうなのか。その内訳を探ってみると、意外にも慎ましい状況が浮き彫りになりました。

◆30代4人家族が「普通の暮らし」するのに1月48万円という結果
労働組合の京都総評が12月5日に発表した「最低生計費試算調査結果―30代～50代の子育て世帯」では「京都で子育てしながら「普通に」暮らすには、年間580万～850万円必要」との結果が出されました。

これは子育て世代に人気な京都市伏見区で暮らす事を想定した調査で、組合員や家族に対して行ったアンケートのデータを分析。生活実態と所持品から「普通の暮らし」の費用を算出したものです。

正規雇用の夫と非正規雇用の妻（扶養家族扱い）に子供2人の家族であれば30代なら月48万6900円、40代なら54万9800円、50代では70万7500円が必要という結果となりました。

◆果たしてこの金額は「贅沢」な「浪費」なのか
30代で月48万円というとかなり高めに感じてしまいますが、これは税、社会保障費や実際には消費を行わない予備費込みの金額。税や社会保障費が約6万8000円で予備費が約3万8000円。実際に使っている金額で考えると38万円強ということになります。

内訳を見ていくと住居費が賃貸マンションで6万3542円。京都市内でもファミリー層の賃料としてはかなり低く抑えられていますが、これは伏見区という場所の特徴もありそうです。水道光熱費も月に1万8636円と、季節ごとのブレはあるにせよ平均レベルと言えます。

交通費では中古自動車購入と維持費で月3万6555円。教育娯楽費を見るとノートパソコンも3万4800円のものを4年間使用する計算です。女性用水着が1990円で計上されている辺りは極めて慎ましいと言わざるを得ません。

さらに教育娯楽費では日帰り行楽が月に1回で費用は5000円、1泊以上の旅行が年に2回で費用が1回当たり50,000円となっており、こちらも贅沢とは言えない内容。

食費が11万2881円になっているのを贅沢だというコメントも見受けられましたが、お父さんの会食が月1回4000円でビール中ジョッキ2杯の計算になっている事を考えると、むしろ少なすぎて現実感がないレベルです。

家での食事に関しては必要なカロリーや栄養素などを考慮した上で計算されているため、スーパーの安売りなどを選んで買うのに比べると高めの数値が出ていてもおかしくありません。ただし食べ盛りの子供が2人いることを考えると、お腹いっぱい栄養のあるものを食べさせればある程度の出費はかさむことになります。

これ以外の内訳も「京都府最低生計費試算調査結果（子育て世帯）」からダウンロードして読むことができますが、消耗品のひとつひとつまで極めて詳細に綴られており、それらを見ても贅沢や浪費の跡は見られません。

◆この水準の「普通の暮らし」ができる人は極一部という現実
48時間を1日8時間勤務の月20日出勤と考えると時給換算で3000円となります。夫が正規雇用で妻が扶養家族という設定なので、妻の収入が月8万5000円と考えると夫の給料は月39万5000円、時給換算だと2500円程度が必要となります。

なお調査を監修した静岡県立大の中澤秀一准教授は「1990年代は30代の平均賃金が必要とされる額にほぼ達していた。非正規労働者の増加に伴って賃金が低下し、今では大企業に勤める一部の人しかこの水準に達していない」と指摘しています。

この48万円を贅沢や浪費と思ってしまうマインド自体が私たちの貧困化を示す何よりの証拠なのかもしれません。