Photo by Ad Blankestijn
農林水産省が新たな指標「食料自給力」に基き、いざというときはコメではなくイモを食べればいいという試算を示しました。
農林水産省は17日、原案をまとめた「食料・農業・農村基本計画」で輸入をゼロと想定して国内の農地をフル稼働した場合にどの程度の食料を供給できるのかを示す新たな指標「食料自給力」を初公表しました。
食料輸入止まっても、イモ中心なら供給可能 農水省指標:朝日新聞デジタル
食料自給力、栄養に課題 農水省新指標 :日本経済新聞
農水省 「稼げる農業」に転換へ 「食料自給力」を初提示 - 毎日新聞
それによると、コメを中心に栄養バランスを考慮した作付を行った場合では、成人の1人1日当たり必要なエネルギー量である2147kcalを650kcal下回った1495kcalしか供給できないことになります。コメ中心では栄養バランスを考えなかった場合でも1855kcalに留まっています。
これに対し、イモを中心に生産した場合、栄養バランスを考えなければ2754kcal。考えた場合でも2462kcalといずれも必要なエネルギー量を満たします。なお、この場合の主食はコメのご飯からヤキイモに切り替わります。
この時点で、食料の国外からの調達が困難となった戦時中を思わせる想定だとネット上で物議を醸しており、祖父母からの「戦時中はコメを食べることができず、芋を食べていた」といったエピソードを語る人も。
実際に全ての輸入が止まるという事態は、戦争や国際関係の悪化に伴う経済制裁以外には考えにくく(地球規模の気候変動もあり得るかもしれませんが、その場合はそもそも国内の農業も大きなダメージを受けるはずです)、農林水産省がそうした想定の下で「コメの代わりにイモを食べれば大丈夫」というまさに第2次世界大戦の節米運動を思わせる試算を公表したことに不安の声が上がるのも無理はありません。
また、この食料自給力は現在使われていない荒れた農地のフル活用を想定していますが、少子高齢化や地方の過疎化に伴って農業人口は減少し続けており、何年も手の入っていない農地も多く、容易に想定通りの収穫を得られることは期待できません。
どのようにして新規の農業の担い手を育成し、過疎化の進む地域で生活基盤を構築していくかを同時に解決していかなければ単なる絵に描いた餅に終わります。
しかし農水省は逆にカロリーベースの食料自給率の目標を50%から45%へと引き下げる方針です。巨額の補助金を投入しても期待された効果が得られず、財務省からは「いたずらに財政負担に依存した国内生産への助成措置で自給率向上を図ることは困難」と批判されていました。
これに変わり農水省が打ち出したのは生産額ベースの自給率目標を現行の70%から73%へと引き上げる「稼げる農業」への転換。野菜や果樹などの低カロリーでも高付加価値品を増やし、輸出の増加も狙います。
この「稼げる農業」の方針はカロリーにならずとも高く売れる作物を作って稼ぎ、必要なカロリーはより輸入に頼るということ。そして「食料自給力」が想定するのは栄養バランスを考えずに農地をフル活用してイモを中心にした作付で輸入なしでも自給していくということ。
この2つの方針を併せて読むと、どうしてもこれらを同時に行うことは不可能ですが、いかにして両立させようというのでしょうか。
(Photo by Ad Blankestijn)
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