「ここにいる間は阪神ファンです」発言の示す安倍首相(ヤクルトファン)の浅からぬ「本質」



一度は聞き流された発言ですが、考えるほどにおかしなものであり、実は安倍首相の「お人柄」をこの上なく現していることがよく分かります。詳細は以下から。


10月14日の土曜日に安倍首相が神戸市で行った演説の一言が反響を呼び始めています。単なるリップサービスと言いきれないものがそこにはありました。

◆「ここにいる間は阪神ファンです」がリップサービス?
物議を醸している演説は盛山正仁候補の応援のために神戸市東灘区のJR摂津本山駅前で行われたもの。冒頭でプロ野球クライマックスシリーズで阪神タイガースがDeNAに勝利したことを話題にして「皆さん、阪神勝ちましたよ。ここにいる間は私も阪神ファンです!」とぶち上げたのです。

安倍首相がヤクルトスワローズのファンであることは以前から知られており、日刊スポーツもこの発言を伝える記事のタイトルを「安倍首相ヤクルトファンなのに神戸で『阪神勝った』 」としています。

さらに10月16日には大阪府八尾市の近鉄八尾駅前の長尾敬候補の応援演説で「この大阪にいる間は阪神を応援しようと思っている。やっぱり阪神が勝てば大阪が元気になる。そしてこの長尾敬が勝てば、日本がもっと元気になると思います」と発言。

ヤクルトファンでありながら、神戸と大阪ならば阪神ファンだろうという思い込みで「ここにいる間は阪神ファンです」「この大阪にいる間は阪神を応援しようと思っている」とやらかしてしまっているのです。

「阪神ファンだと言っとけば喜ぶだろう」という発想は実際に阪神ファンの関西人からしてもこの上なく失礼な話ですし、日刊スポーツによると「近鉄沿線地域で、かつては近鉄ファンが多い場所で知られた」八尾市民からすれば二重の意味で失礼な話になります。

そして「ここにいる間は」「この大阪にいる間は」と、自分が阪神ファンだと考えて語りかけている相手に「その場限り」であることを臆面もなく言い放っているのです。安倍首相は本当にこの「リップサービス」が歓迎されると考えていたのでしょうか?

なお、神戸市の演説では野党について「当選するために党を変えたり看板を変えたりそういうことばっかり」と批判していましたが、どう考えても「当選のために応援球団を変えた」というブーメランが後頭部に刺さる案件となっています。

◆応援球団だけの話ではありません
安倍首相の「その時だけ、目の前の人に都合のいいことを言う」という発想は単に応援球団の話だけに留まりません。これまでのBUZZAP!記事から振り返ってみましょう。

・TPP断固反対
安倍首相は自民党総裁として衆議院選挙を戦って政権を奪取した2012年の衆院選で「TPPへの交渉参加に反対!」「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」としてTPP反対を前面に打ち出しました。



しかしその後自民党がTPP賛成に転じ、重要5項目を守り切れないにもかかわらず調印を目指し、トランプ大統領のTPPからの永久離脱を受けても残った国での調印にこだわっています。

なお、安倍首相は2016年の衆院TPP特別委員会で民進党の柿沢未途議員の質問に答える形で「私自身はTPP断固反対と言ったことは一回も、ただの一回もございませんから、まるで私が言ったかのごとくの発言は謹んで貰いたい」とも発言。実際には言っていますし、TPP反対は完全な嘘でした。

・リーマン前みたいだから消費増税延期
2016年4月14日の熊本地震発生から4日後の4月18日に「リーマン・ショック級、大震災級の事態にならない限り予定通り引き上げていく」として消費税の10%への増税延期を力強く否定した安倍首相。

しかし同年5月26日には伊勢志摩サミットに出席した各国首脳に対して「リーマン・ショック前と状況が似ている」と指摘、英キャメロン首相(当時)と独メルケル首相を始め、市場関係者からも疑問の声が発せられました。


サミットの直前に発表された政府の発表した月例経済報告でも

世界の景気は、弱さがみられるものの、全体としては緩やかに回復している。

先行きについては、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、アメリカの金融政策正常化の影響、中国を始めアジア新興国等の経済の先行き、原油価格等の下落の影響、金融資本市場の変動の影響等について留意する必要がある。



となっており、政府もリーマン前と似ているとは認識していないことが明らかになっています。

しかし野党に「アベノミクスの失敗を隠して消費増税延期するための隠れ蓑にサミットと世界経済を使った」と批判された安倍首相は同30日に国会内で開催された自民党の役員会の中で安倍首相は「私がリーマンショック前の状況に似ているとの認識を示したとの報道があるが、まったくの誤りである」と発言。その場の都合でコロコロと発言を変えています。

結局のところ消費増税が延期されたことはご存じの通りです。

・消費税率の引上げ分は、全額、社会保障の充実と安定化に使われます
安倍首相は2014年の衆院選で「消費税財源は、その全てを確実に社会保障に使い、平成29年4月までの間も、着実に子ども・子育て支援、医療、介護等の充実を図ります」としていますし、その前の消費税を8%に引き上げた段階の政府広報でも「消費税率の引上げ分は、全額、社会保障の充実と安定化に使われます」と大々的に謳っていました


しかし安倍首相は今回の「国難突破解散」の理由を北朝鮮の脅威への対策と消費税の「10%引き上げの増収分を国の借金返済から社会保障の充実に振り向ける」事への国民の信を問うためとしています。

つまりは国民に対して公的に行っていた約束を3年に渡る国政運営の中ですっぽかして財政健全化として国の借金返済につぎ込んだ上に、再度それをやることを公約として掲げて解散・総選挙をしていることになります。

・「丁寧に説明していく」
「丁寧に説明していく」「国民に理解を求める」は安倍政権の頻出ワードですが、残念ながら大きな議論を巻き起こした問題ほどまともに理解できる説明が行われてきませんでした。

安保法制は2度に渡る強行採決によって無理矢理に成立させられましたが、成立後に国民忍耐して丁寧な説明を行うという安倍政権の言葉は野党による憲法第53条に基く臨時国会召集要求からの逃亡によって反故にされました。


2017年の国政を揺るがした森友学園問題・加計学園問題でも、丁寧な説明は全く行われないままに閉会を迎え、さらに通常国会終了後の記者会見では「『信なくば立たず』であります。なにか指摘があればその都度、真摯に説明責任を果たしていく」としながらも臨時国会の開催に遅々として応じず、応じたと思えば冒頭100秒での解散という暴挙に出た上に選挙戦でもまったく説明していません。

◆まとめ
上記の例は安倍首相個人に関するものも、安倍政権全体が絡んでくるものもありますが、この5年間の政権運営を見てみれば今回の「ここにいる間は阪神ファンです」と通じる発想が非常に多いことがよく分かります。

そして問題は「その時だけ、目の前の人に都合のいいことを言う」ということと「その時が過ぎ、その場がしのげれば言ったことは反故にされる」ことがセットになっている事。

幼児教育無償化、子育て支援、拉致被害者を取り戻す(実際には安倍政権はひとりも取り戻していません)、耳に甘く威勢のいい目標が果たして選挙後にどれだけ実行されるのか、過去の実績からよく考えてみる必要がありそうです。

安倍首相ヤクルトファンなのに神戸で「阪神勝った」

安倍首相「ここにいる間は阪神ファンです!」小池代表と神戸でニアミス/芸能/デイリースポーツ online


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