公募校長が大不評だった大阪市の教育ですが、さらなる衰退が見込まれそうです。詳細は以下から。
◆公募校長に続く新たなトンデモ制度
大阪市の教育といえば2012年度から当時の橋下徹市長の肝いりで始められた民間人登用の推進を目指した校長の公募が思い出されるでしょう。セクハラや経歴詐称などの不祥事が相次いだ事からグダグダになり、応募人数も尻すぼみになっています。
そんな大阪市の教育委員会が「がんばっている教員がよりがんばれるような制度構築」を目指して2018年度から「主務教諭」なる新たな教諭の職を設置することになりました。
これは既存の教諭と首席・指導教諭の間に設けられるもので、「大卒で教員経験8年以上」などの条件を満たした希望者から選考されることになります。
この主務教諭は通常の児童生徒への指導に加えて管理職の補佐や若手教諭の育成にも従事させられます。そして選考は中堅以上の教諭から、平素の勤務状況で能力・業績の評価によって行われることになります。
◆「主務教諭」制度の問題は?
問題は、37歳までにこの「主務教諭」にならない場合は給与が32万円程度で頭打ちとなり、本来なら定年の60歳まで続く昇給がなくなるということ。育児・介護等の家庭の事情などで仕事の増える主務教諭にならないと決断すれば、37歳以降に昇給がなくなり人生設計に大きな影響が生じる可能性もあります。
こちらは大阪市の「新たな教職員の人事給与制度の方向性について(案)」という資料に添付されたグラフですが、あまりにもあからさま。
そしてさらに大きな問題は、選考基準が管理職任せの曖昧なものであり「管理職に気に入られた教員が選考される」可能性が十分に考えられるということ。一般企業でも「上司ウケの良い人が出世する」というケースはままありますが、教育の場にもこうした視点が持ち込まれることになります。
◆いったい大阪市の教育はどうなるのか?
これらの帰結として考えられるのが競争の激化と人材の流出です。前者については、管理職のウケを狙ってただでさえ激務の教諭らが自らこれまで以上のブラック労働に邁進する可能性があります。
また、考えたくもない事ですが、管理職ウケのダシに児童・生徒を巻き込み「素手でのトイレ掃除」や「組体操で巨大ピラミッド」「部活動での熱血(物理)指導」といった暴挙が行われる可能性も十分に考えられます。
後者に関しては、諸事情から「主務教諭」になりたくない、もしくはなれない教員が大阪市以外の地方自治体に流出する事が十分に考えられます。
市教委は2月に主務教諭の募集を強行しましたが、その際に「育児・介護休業で年45日以上休んだ場合を選考対象外」としたことには大阪市議会でさすがに各会派から批判が集中して再検討に追い込まれました。
ですが、市教委が育児・介護休業で休むことすらも敵視していることは既に明白に示されており、全国規模で大問題になっている育児・介護問題すらサポートどころか昇給停止の理由にしようとする認識のズレっぷりには唖然とする他ありません。
将来的に安定した待遇と収入が見込めなければ結婚や出産、育児などを計画できなくなるという事はBUZZAP!では繰り返し指摘してきました。
一般企業ですら多少なりとも改善を試みる会社が現れてきている状況で、教育機関がその真逆に突き進めばそんな環境から人材が止めどなく流出する事は子供でも分かる話です。そしてもちろん教員不足で被害を受けるのは児童・生徒に他なりません。
ただでさえ疑問視されている大阪市の教育がこれ以上惨憺たるものになれば、本格的に日本第2の都市の座を遠からず明け渡すことになるかもしれません。なお、既にこの主務教諭制度に対しては反対するウェブ署名も始まっています。
新たな教職員の人事給与制度の方向性について(案)
大阪市教委が新設の「主務教諭」制 37歳までに「主務教諭」にならないと60歳まで昇給なし 人材流出、現場二分と反発の声 ? アジアプレス・ネットワーク
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