19年出生数が前年比5万人減の86万人台に急落、予測の2年前倒しで90万人を割った理由とは



BUZZAP!で7月に報じていた最悪の予測が的中してしまいました。詳細は以下から。


◆少子化が急加速、出生数は過去最少の86万人に
共同通信が報じたところに寄ると、2019年に生まれた赤ちゃんの数が過去最少となる86万人程度になることが明らかになりました。これは1899年に統計を取り始めてからの120年間で最も少ない数となります。

また、厚生労働省の研究機関では出生数が90万人割れとなるのは2021年と見込んでいましたが、2018年の91万8400人から5万人以上減少して2年の前倒しとなっています。


割合で見ると、わずか1年で赤ちゃんの数が6%も減少したことになりますが、いったい何が起こっているのでしょうか。BUZZAP!では今年7月に2019年の出生数は約86万人にまで急減か、急加速する少子化をデータから紐解くと見えた「子ども手当」の意味という記事を公開していますが、この際の考察を振り返ってみましょう。

◆実は起きていた「第3次ベビーブーム」
2000年から2018年までの出生数を日本の人口・経済関連のデータを折れ線グラフにできる「JPチャート」でグラフ化してみると、非常に興味深い事が分かります。それは2006年~2008年にかけて減り続けていた出生数がわずかに盛り返していること。


この時期には「団塊ジュニア(1971年~1974年生まれ)」が32~37歳を迎えています。日本の平均初婚年齢(30歳前後)を踏まえると、この期間の出生数微増は多くの団塊ジュニアが結婚・出産したことによるものと考えられます。

第一次ベビーブーム(1947年~1949年)、第二次ベビーブーム(1971年~1974年)も継続期間が3~4年間であることを考えれば、この時期が日本の少子高齢化に歯止めを掛けるための「最後のボーナスステージ」だったと言うことができそうです。


事実この期間を過ぎて2016年頃からは急速に出生数が低下。この歳には団塊ジュニアが42~45歳となり、後続のロスジェネ世代(1970年~1985年頃生まれを指すが諸説あり)も出産適齢期を超えつつあるためと考えられます。

ただし、上記の「第三次ベビーブーム」で団塊ジュニアが32~37歳だったことを考えると、少なからぬロスジェネ世代はまだ出産適齢期を終えていません。そこで問題になるのが国の少子化対策や若年層へのケアの不備、さらには日本社会の妊婦や母子への攻撃的な態度です。

◆少子化を目指すかのような国と社会のあり方
まず第二次安倍政権になってからは、民主党政権が行った高校授業料の無償化を「理念なき選挙目当てのバラマキ」と批判して2014年に廃止。910万円の世帯年収の所得制限を掛けて高等教育無償化の理念を大きく後退させてしまいました。

また民主党政権のおこなった子ども手当に対しても2010年の保守系雑誌「WiLL」での対談で「子育てを家族から奪い去り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化だ。これは実際にポルポトやスターリンが行おうとしたことだ」と批判しており、廃止に追い込んでいます。

加えて学資ローンの返済問題やブラック労働の蔓延などで若者の貧困化と疲弊が進み、また常態化した非正規雇用によっても、保証のない将来への不安が結婚や出産への大きなハードルとなっています。

恋愛をして結婚・出産に至るには大きな責任が伴い、一定のお金と将来的な見通しも必要です。「ずっと非正規雇用のままで突然雇い止めされたら?」と考えながら結婚に踏み切るのは容易ではなく、「ブラック企業で月に150時間以上サビ残させられて休みも取れない」状態で婚活も無理な話です。

育児に関しても、待機児童問題はいまだに女性が出産を躊躇う大きな障壁となっていますし、大学の学費の高騰は教育費の重い負担としてこちらも出産を抑制する要因となっています。


さらに社会的にはマタニティーマークを付けていると攻撃される」「ベビーカーを使用していると怒鳴られる」「保育園児の歌がうるさいと脅迫電話がかけられるといった風潮が日本社会に蔓延していることも大きな原因のひとつと言えます。

国も社会も子供を産むことを応援せず、妊娠時代から子育て時代まで親子共に攻撃され、金銭的にも精神的にも疲弊させられる現代日本。子供を産み育てないと決意するカップルが増えるのはある意味自然ですらあります。

来年には日本人女性の半数が50歳以上となりますが、この先の少子化はどこまで加速するのでしょうか。

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