「カスタマーハラスメント」の主犯は中高年男性だったことが判明、店員の過半数が被害経験



接客業に従事した経験のあるすべての人の実感がデータとして可視化されました。詳細は以下から。


◆現代日本に広くはびこる「カスタマーハラスメント」という悪質クレーム
飲食店や小売店などの店員に対し、些細な理由をもとに暴言を吐いたり威嚇・脅迫したり何時間も粘着してクレームを吐き続ける迷惑行為は現在カスタマーハラスメント(カスハラ)とも呼ばれて広く知られています。

これは店員という反論・抗議をしにくい立場にある相手に対し、客という強い立場を利用して怒鳴りつけたり脅迫して鬱憤を晴らすという恥ずべき行為ですが、「お客様は神様です」という謎のモラルが根強く残る日本社会では、例え暴言や不合理なクレームでも謝罪し、誠意をもって対応すべきと長く考えられていました。

現在カスハラはハラスメントのひとつして認知されることにより、店側も少しずつ店員を守り、悪質なクレーマー客を排除する方針へとシフトしていますが、まだまだこうしたカスハラに晒されている現場の従業員は少なくありません。

◆コロナ禍中、5人にひとりがカスハラの被害に
日本最大の産業別労働組合であるUAゼンセンは、2020年7月10日から9月23日にかけて悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査を実施、2万6927件の回答を得ました。

それによると、直近2年以内にカスハラを受けた人は56.7%。その中で1/3を超える35.9%が新型コロナ禍の影響によるカスハラがあったことを報告しています。これは働く人の5人にひとりにも及んでいる計算です。


例えば総合スーパーでは「『遠くから来たのにマスクがない!あなた達は自分の分は確保しているのだろう。何時のトラックで、荷物は来るのか!隠しているのなら、早く出しなさい!』といつまでも叱責された。」という、ニュースで報じられたことのあるような内容も。

居酒屋でも「このコロナ禍に一度口に入れた料理をおしぼりに吐き出し、そのおしぼりを下げろと強要し更には『はい、コロナコロナ』と発言」といった、場合によれば逮捕案件となる事例も報告されています。

なお、回答者の半数近くがこの2年でこうしたカスハラが増加傾向にあると報告しています。ただし経済停滞に伴う「貧すれば鈍する」状態のせいか、新型コロナのパンデミックが原因かについてはさらなる分析が要りそうです。


◆カスハラの「主犯」は40~70代の中高年男性
ではいったいどんな人がカスハラをしていたのかというと、男性が74.8%と3/4を占め、女性の23.4%のトリプルスコアとなっています。


また年代で見ると10代は0.2%、20代は2.0%と極めて少なく、30代でも8.6%に過ぎません。これが40代になると18.9%と一気に増加し、50代は30.8%、60代は28.0%と最大のボリュームゾーンとなっています。

70代以上は11.5%と再び減りますが、これでも10代から30代までを合わせたよりも多い事には注意が必要です。


メディアなどではよく若い世代のモラルが問題にされがちですが、飲食店や小売店での買い物という日常生活の中で、カスハラの加害者となっているメイン層が中高年男性であることがよく分かります。

なおカスハラの内容としては対面で長時間怒鳴りつけたり威嚇したり脅迫するといった、誰がどう見てもハラスメントでしかあり得ないもの。



そのきっかけも明らかに接客やサービス提供時のミスと呼べるものは2割程度で、不満のはけ口や嫌がらせが1/3に達し、消費者側の勘違いも15%、わからないものも10%と、半数は対応する店員側の落ち度ではないもの。


もちろん落ち度があればハラスメントをしてもよいという話にはまったくなりませんが、客という強い立場を利用した、店員に対する不合理なカスハラの横行が明確に可視化されたことになります。

現時点ではこうしたカスハラに特に対策をしていない企業が43.4%にも上っており、カスハラ自体やそれを受けた店員らをサポートする体制が不十分なことが伺えます。


繰り返しになりますが、お客様は決して神様ではなく、たかだか対価を払って商品やサービスを受けているだけの店側と対等な関係の存在でしかありません。

昭和の間違った社会通念でハラスメントを繰り返す「モンスターカスタマー」に対し、企業は敢然と立ち向かい従業員を守る必要があります。

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