貴重な映像資料が無料配信されています。「パラサイト 半地下の家族」や「万引き家族」を見た人には特に興味深い内容となっています。詳細は以下から。
格差の拡大と貧困の蔓延が強く危険視されている現代日本。老々介護の末に親子が餓死するといった極めて深刻な事件も報じられるほど事態は切迫しています。
これまでは「一億総中流」と呼ばれるほど平均的に豊かとされた時代もありましたが、当然そこに至るまでの戦後の復興期には大きな貧困問題がありました。
建設省が監修した1961年のドキュメンタリー映画「スラム」は、戦後16年目にして高度経済成長期ど真ん中の関西のスラムの実情を映し出しています。
明治期に建てられたまま町が寂れ、修繕もされずに人々が住み着いている様子。戦災で破壊されたビルに増設を重ねた街並み、橋の下や川の上の不衛生的で密集した家々など、私たちが発展途上国のスラムとしてイメージするままの風景が広がっています。
「スラム」の映像の中ではっきり確認できるのは大阪の西成と中津ですが、それ以外にも多くのスラムの映像が登場しています。
なお、映像の中では人々の生活や暮らしぶりなども記されており、家の中や路地のディティールの描写は圧巻。狭く不衛生的な環境で力強く生きる、エネルギーに溢れた人々への作り手の「感嘆」の感情がありありと読み取れます。
その上で、貧困が差別を生み、スラムから抜け出せなくなってゆく「貧困の連鎖」についても指摘しており、この辺りは現代の視点から見ても考えさせられるところ。
建設省監修ということもあり、最後はスラムの住民たちが住宅改良事業によって改良住宅(いわゆる「団地」)に移り住んでいく様子がハッピーエンド的に描かれています。
なおこの映像では、実際に戦後のこうしたスラムにどのような属性の人々が主に住んでいたのかには触れられておらず、この辺りはまた別の闇として考える必要があります。
現在この「スラム」は先行配信として科学映像館のサイトから閲覧が可能。今後YouTubeなどにアップされてゆくことになりそう。
これ以外にも「みちのく」「京都 洛中洛外」「京都の川」「瀬戸内海ー歴史のおもかげを訪ねてー」の4本が今回の先行配信のラインナップとなっており、60年代から80年代の日本の様子を知ることのできる貴重な映像資料となっています。
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