維新の会「公式ファクトチェッカー」1発目から一般人のツイートを「晒し上げ」てしまう



公党が自身の政策に対する一般人の感想を自ら「ファクトチェック」し、しかも当該ツイートを引用リツイートで晒し上げるという事態となっています。詳細は以下から。


◆維新の会「ファクトチェッカー」とは
大阪維新の会は2021年2月17日、デマや誤情報に対して「情報の真偽を客観的事実をもとに調査し、事実を発信していく」とするアカウント「ファクトチェッカー【公式】大阪維新の会」を公開しました。そのプロフィールは以下のようなもの。

大阪維新の会では、昨今の深刻化するデマ情報の氾濫を受け、住民の皆様に正しい情報を知っていただけるよう情報の真偽を客観的事実をもとに調査し、事実を発信していく公式アカウントを開設しました。 SNS上で、見過ごせないデマや誤情報等御座いましたら情報提供ください。


ファクトチェックはそもそもその情報に利害関係のない第3者が行わなければ意味のないもので、大阪で「与党」的な立ち位置にある公党がするような話ではありません。

以前Buzzap!では「政府、デマ拡散抑止へ本格対策」という方針の危険性を論じましたが、その大きな問題点は「国家などの公的機関がフェイクニュースの発信源となる」というケースが存在していること。

上記記事では日本で政府や政治家らがフェイクニュース源となっている例を多数論じましたが、ファクトチェックでも「いったい誰がフェイクニュースだと認定するのか?」「そのファクトチェックする主体は本当に中立なのか」という問題が常について回るものであることは肝に銘じる必要があります。

◆一発目から一般人アカウントを「晒し上げ」
さて、アカウント公開時点から当然そのような批判は行われていましたが、心配したとおりの事態が一発目から発生しています。

ファクトチェッカーは2月26日、大阪市在住の新型コロナの濃厚接触者だった一般人のアカウントを引用リツイートで直接「晒し上げ」てしまいました。

魚拓

このアカウントは濃厚接触者となった後も、大阪市からはほぼ放置状態だったという自らの体験を掲載し「正に放置状態 大阪市終わってる」と感想を述べただけのもの。これを取り上げたということは、維新の会はこの極めて個人的な感想を「見過ごせないデマや誤情報」と判断したことになります。


ファクトチェッカーアカウントは文章の細部に対して執拗に「ファクトチェック」を行っていますが、「調査結果」とする部分の多くは呼んでみればツイート主の文言に対して「大阪市の対応はそういうものなので問題ない」とする自己正当化に留まります。

「解説」の部分では「外出自粛=一切の外出ができない」と誤認されている可能性を指摘し、聞きなれない用語を使う難しさを痛感していますが、それはどう考えてもツイート主の問題ではなく松井一郎維新の会代表が市長を務める大阪市の行政の問題です。

むしろ大阪市民に説明が足りずにこのような不安を抱かせ、不便を強いたことを謝罪しなければならないような事案ですが、そうした記述はありません。

もちろんこうした「誤認」を減らせるように大阪市なり維新の内部で情報を共有して改善することは大切ですが、外部に対しては改善した上でその旨をアナウンスをすべき内容です。

◆当人にも本件への確認はなし
加えてこれは元ツイートへの引用リツイートの形で公開されており、公党が一般人に対し、自らが多数派である自治体内部での行政への不満を「見過ごせないデマや誤情報」と認識してフォロワーらに晒した形となっています。


またツイート主はこのツイートに関して維新の会からなんら確認を受けていないことを明言しており、公党が一般人を勝手に名指しで晒したことが確定。


あるツイートを引用リツイートすることで、同調したフォロワーらが元ツイート主にネットリンチするという、いわゆる「ファンネル攻撃」はツイッターユーザーには周知のものですが、公党がこれを「ファクトチェック」と称して仕掛けたことになります。

これまでも政治家や政党が一般人に引用リツイートで言及するケースはありました。ですがその行為に対する批判も一部あったにせよ、あくまでその当人や組織の「見解」としての反論という形で理解されていました。

ですがこのように「ファクトチェック」というお題目を掲げ、公党という巨大な組織が自分たちに都合の悪い情報を流した一般人をデマ扱いで晒し上げる流れが続けば、今後ネット上での自由闊達な発言を委縮させる「言論弾圧」にもつながりかねず、別問題として考える必要があります

なお、このツイートのリプライでは、イソジンや雨がっぱ、大阪ワクチンやリコール署名偽造事件の田中事務局長の発言についてもファクトチェックしろという意見も飛び交っています。果たして維新は自身に関わるこれらの問題に答えることができるでしょうか。

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