興和の「イベルメクチンがオミクロン株に効果」まだ飛びつけないたったひとつのシンプルな理由



今回の発表で「イベルメクチンは効く」と飛びつくのは待った方がよさそうです。詳細は以下から。


2022年1月31日、興和がかつてから新型コロナへの効果が取り沙汰されてきた寄生虫病薬イベルメクチンが、オミクロン株の治療薬として効果があることを確認したと発表しました。

興和によると、同社は2021年にノーベル生理学医学賞受賞の大村智北里大学特別栄誉教授から直接、イベルメクチンの臨床試験実施について依頼を受けたとしています。

なお、イベルメクチンは2015年に大村特別栄誉教授の研究を元に開発され、アフリカ諸国を中心に寄生虫感染症治療薬として使われている薬品です。

本件は31日にロイター通信が「興和、「イベルメクチン」のオミクロン株への抗ウイルス効果を確認」と報じ、続いて日経新聞など多くのマスメディアも報じていますが、「興和 イベルメクチンの「オミクロン株」への抗ウイルス効果を確認」とするプレスリリースを読むと気になる部分があります。それが

治験薬「イベルメクチン」につきまして、北里大学との共同研究(非臨床試験)から、既存の変異株(アルファ・ベータ・ガンマ・デルタ株)と同様に、オミクロン株に対しても同等の抗ウイルス効果があることを確認いたしました。

興和 イベルメクチンの「オミクロン株」への抗ウイルス効果を確認より引用)


というところで、効果の確認が非臨床試験に基づいたものであるとされています。加えてこの非臨床実験が動物実験なのか、試験官を使ったものなのかといった詳細も不明で、数値もいっさい提示されていません。

一方、プレスリリースで臨床試験についての記述を抜き出すと以下のとおり。

・イベルメクチンの新型コロナウイルス感染症に対する有効性ならびに安全性を確認するための臨床試験を実施しています。
臨床試験の中で有効性・安全性を確認しているところ
・興和はイベルメクチンの SARS-CoV-2 に対する臨床効果を確認し、いち早く国民の皆様に提供することで、新型コロナウイルス感染症治療に少しでも貢献してまいります。
・興和は、ヒトに対する医薬品の臨床試験の実施基準である「GCP(Good Clinical Practice)」で定められている厳格な基準に則り、イベルメクチンの臨床試験を実施しています。

興和 イベルメクチンの「オミクロン株」への抗ウイルス効果を確認より引用)


現在臨床実験が厳格な基準に則って実施されており、有効性と安全性を確認しているところとされていますが、このプレスリリース自体は臨床事件に基づいた抗ウイルス効果の確認ではありません

つまり、現時点ではイベルメクチンがオミクロン株を含めた新型コロナに対する抗ウイルス効果があるとは言えても、人間に対して安全かつ有効に処方できると言える状態ではないことになります。

本当に有効ならば素晴らしいことですが、どの程度の量でどれほどの効果があり、人体にどういった副反応をもたらすのかはまだ未確定。このニュースだけでイベルメクチンの服用を自己判断するのは早計と言えそうです。

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