金額から見ると、従事者1000人弱程度の商業捕鯨は1700万人の就職氷河期世代よりも3倍重要ということになります。詳細は以下から。
◆捕鯨対策の補助金は毎年51億円
日本がIWC(国際捕鯨委員会)からの脱退を正式表明したのは2018年12月26日のこと。
菅官房長官が記者会見で「商業捕鯨を来年7月から再開することとし、国際捕鯨取締条約から脱退することを決定した」と述べ、戦後続いてきた日本の国際協調路線は幕を閉じました。
ただし日本人の鯨肉消費量は極めて少なく、2017年のデータではわずか3000トン。これはCNNによると、1人当たりの消費量は「スプーン2杯分」程度に過ぎません。
商業捕鯨再開後も消費量は回復せず、斜陽産業として細々と続いているのが現状です。
ですが鯨肉の卸売市場規模はわずか25億円程度にも関わらず、水産庁は商業捕鯨再開以降、捕鯨対策の補助金を毎年51億円も計上し続けています。
こちらは水産庁による令和4年度(2022年度)の「水産予算の概要」の記述です。
市場規模の2倍超という金額を、朝日新聞は「まさに補助金漬けである」と指摘しています。
◆一方の就職氷河期世代への支援は17億円どまり
3月26日には就職氷河期世代の就労者社会参加を支援する事業に対し、内閣府が2022年度分として計17億6000万円を交付する方針を固めたことが報じられました。
これは全国115自治体の160事業に対するもので、新たに奨学金返済制度への活用や専門相談員の配置なども想定し、参加自治体数も事業数も過去最多となっています。
これはつまり、過去最大級の氷河期世代支援ですら、商業捕鯨への補助金の1/3に過ぎないことを意味します。
現在の捕鯨従事者数は、nippon.comによると「家族を入れても1000人規模に届くかどうか疑わしい」レベルの規模に過ぎません。
総務省統計局による「第六十五回日本統計年鑑」の、2013年時点の南極海と北太平洋での調査捕鯨の乗組員数を合計しても350人程度のため、この見立ては妥当と言えるもの。
一方の就職氷河期世代はバブル崩壊後の1993年から2005年ごろに高校や大学を卒業した世代で、その数は約1700万人。今もこの世代の多くが非正規雇用に従事し、貧困にあえいでいることはすでにご存じのとおり。
1000人の捕鯨従事者と1700万人の就職氷河期世代の数には1万7000倍の差があるものの、捕鯨従事者へのサポートの方が3倍も手厚いのが現状ということになります。
誰も食べていない鯨肉と中年期に差し掛かった1700万人の日本人、日本政府がどちらを重視しているのかはっきり分かる結果となっています。
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