今月26日に訪米を控えた安倍総理がテレビ番組で戦後70年談話に「侵略・おわび」の文言を不要とした発言と靖国神社への真榊奉納に対し、国内外のメディアから一斉に反発が巻き起こっています。詳細は以下から。
安倍首相は4月20日夜に出演したBSフジの番組で、今年の夏に発表予定の戦後70年談話、いわゆる「安倍談話」に第2次世界大戦に関する「植民地支配と侵略」や「痛切な反省」、「心からのおわび」といった文言を使うかどうかについて
「(村山富市首相談話などと)同じことなら談話を出す必要がない。(過去の内閣の歴史認識を)引き継いでいくと言っている以上、これをもう一度書く必要はない」
「(同じなら)名前だけ書き換えて、コピーして渡せばいい」
として否定的な見解を重ねました。
時事ドットコム:安倍首相発言要旨=戦後70年談話
時事ドットコム:侵略、おわび「書く必要ない」=戦後70年談話で安倍首相
村山談話の「侵略・おわび」、首相「再度書く必要ない」:朝日新聞デジタル
そして翌21日には靖国神社の春季例大祭で「内閣総理大臣 安倍晋三」名で真榊を奉納しました。
安倍首相が総理名義で真榊奉納 靖国神社の春季例大祭
これらのニュースに海外のメディアは一斉に反応。ニューヨークタイムズ紙は現地時間20日付けの「安倍晋三と日本の歴史」と題した社説で安倍首相を右翼ナショナリストであるとして、
訪米の成功するかどうかは、安倍首相がどれだけ真摯に開戦の決定、中国と朝鮮への残虐な支配、多数の女性を性奴隷として従事させた「従軍慰安婦」の問題を含めた日本の戦時下の歴史に向き合えるかにかかっている。
(Shinzo Abe and Japan’s History - NYTimes.comより引用・拙訳)
として厳しく批判。「日本が過去への批判から目を背けようとするなら、日本の目指す21世紀のリーダーとしての役割を果たすことはできないだろう」としています。
また、ガーディアン紙は村山談話や上記ニューヨークタイムズ紙の社説も引用し、本件を詳細に報道。その中で安倍首相が戦時の日本の残虐行為を反芻する傾向を「自虐史観」と表現していることにまで触れています。
Shinzo Abe may not repeat previous apologies for Japan's wartime atrocities World news The Guardian
また、ガーディアン紙は記事の最後に世界的作家である村上春樹の「中国や韓国に謝罪が受け入れられるまで謝罪し続けるべきだ」としたインタビューを引用しています。
また、ロシアタイムズ紙は旧日本軍の紛争で旭日旗を掲げて靖国神社に参拝する人々の写真をトップに掲載し、「戦後半世紀以上の模範的な平和主義を経て、安倍政権が戦後の平和主義的スタンスから離れようとしている」と指摘しています。
Enough with WWII apologies Japan PM sees no need to reinforce remorse RT News
こちらのシンガポールのストレーツタイムズ紙では安倍首相を「厚顔無恥なナショナリスト」として中韓の反発についても触れています。
Japan PM Abe says may drop direct apology in WWII statement - East Asia News & Top Stories - The Straits Times
アメリカ合衆国の有名ネットメディアVoxのディレクター、Max Fisherさんは「メルケル独首相がナチスを祀った神社に奉納を行うことが『進歩』だと捉えられる世界を想像してみろよ」と皮肉っています。
Imagine a world in which Angela Merkel merely sending "offerings" to a Nazi worship shrine is considered progress https://t.co/ESJzmaeSed
— Max Fisher (@Max_Fisher) 2015, 4月 21
また国内メディアでは、比較的安倍政権に好意的と受け止められている読売新聞が社説で「戦後日本が侵略の非を認めたところから出発した、という歴史認識を抜きにして、この70年を総括することはできまい」「侵略の定義について国際法上、様々な議論があるのは事実だが、少なくとも1931年の満州事変以降の旧日本軍の行動が侵略だったことは否定できない」とした上で、「政治は、自己満足の産物であってはならない」と強烈に批判しています。
戦後70年談話 首相は「侵略」を避けたいのか 社説 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
なお、安倍首相は戦後70年談話について上記のテレビ番組で「私の考え方がどのように伝わっていくかが大切だ」と述べていますが、これは明確に間違いです。談話は日本国としてのスタンスを伝えるもので、安倍首相個人の考え方を述べるべき場ではありません。
読売新聞の社説でも「70年談話はもはや、首相ひとりのものではない。日本全体の立場を代表するものとして、国内外で受け止められている」とされていますが、「もはや」ではなく最初から日本の立場を代表するものです。
安倍首相の考え方によって「侵略」という過去の認識や「おわび」の文言を削除することが、諸外国から平和主義から背をそむけた危険なナショナリズムであると認識されれば国益を著しく損ねることとなり、日本全体の立場を代表する戦後70談話として発表するには不適切と言う他ありません。
どうしても安倍首相が自らの考え方を開陳したいのであれば、戦後70年談話としてではなく「私人としての内閣総理大臣 安倍晋三」として発言すればよいのではないでしょうか。
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