今、私たち日本人は戦後最長の好景気の中で我が世の春を謳歌しているのだと政府が発表し、NHKが全力で報道しています。詳細は以下から。
◆ついに「戦後最長の景気回復」を達成
NHKが1月29日に報じたところによると、政府は1月の月例経済報告で「景気は緩やかに回復している」という判断を維持。これによって今の景気回復の期間が6年2ヶ月に達することとなり、戦後最長となった可能性があるとのこと。
月例経済報告では個人消費を「持ち直している」とし、企業の設備投資も「増加している」という見方を据え置いた上で景気全体について「緩やかに回復している」というこれまでの判断を維持しました。
これを受けて茂木経済再生相は閣僚会議後の記者会見で「今回の景気回復期間は今月で6年2か月となり、戦後最長になったとみられる」と発言しています。今から6年2ヶ月前といえば、もちろん第2次安倍政権が発足し、力強くアベノミクスか始動した時であることは言うまでもありません。
ただし最終的な景気の回復や後退の時期は、内閣府の有識者による研究会が十分な統計データがそろった段階で正式判定するとのこと。
◆「戦後最長の景気回復」の要因と中身はどんなもの?
麻生財務相は戦後最長の景気回復が続いている要因を「アメリカが、経済戦争の相手を中国であって日本ではないという方向に切り替えたこと。そして国内的に言えば、いわゆるデフレ対策をこの5、6年やらせてもらったこと。この両方が景気回復が74か月続いている背景だと思う」と分析。
また茂木経済再生相は景気回復の実感がないという指摘に対して「いざなぎ景気の頃は東京オリンピックから大阪万博にかけての高度成長期であり、バブル景気の頃は株価や地価が大きく上がり、人口も増えている時代だった。現在は人口が減少する中でも雇用者数がバブル期並みに増加し、景況感の地域間格差も小さくなっており、今回の景気回復の優れた特徴ではないかと考えている」と述べています。
麻生財務相の語る「デフレ対策」がまさにアベノミクスそのものを指していることは言うまでもありませんが、そのアベノミクスの重要指標である「賃金伸び率」が厚労省の「毎月勤労統計調査」で2018年1月から水増しされていたことはBUZZAP!でも繰り返しお伝えしたとおり。
さらに「人口が減少する中でも雇用者数がバブル期並みに増加」という部分は、少子高齢化で労働人口が急激に減少することによって深刻な人手不足が起こり、有効求人倍率がバブル期を超える勢いで増えたということ。こちらは2017年時点で好景気だからではないと全方位からツッコミを受けています。
総務省の資料によると、15~64歳の生産年齢人口が2013年10月時点で7,901万人と32年ぶりに8,000万人を下回っており、今後も減少傾向が続くことが予測されています。
つまり、前者は今国会で徹底的に検証されなくてはならない統計不正ど真ん中のデータに基づくものであり、後者は少子高齢化による人手不足の結果でしかありません。実際にGDPや世帯収入の面でも非常に厳しい数字が出ています。
◆GDPは年率2.5%減に下方修正、世帯収入の中央値も22年前のピークの3/4に
内閣府が2018年12月10日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)の改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%減、年率換算では2.5%減となっており、速報値(前期比0.3%減、年率1.2%減)から大きく下方修正となりました。
この下方修正の際に麻生財務相は「景気が悪くなってきているという感じではない」と好景気が継続しているという認識を示していました。
ですがバブル崩壊後の1995年には世帯収入の中央値はピークの550万円を記録していたところ、それから22年間で122万円減少しています。これは22%超の減少ということで、およそ3/4になったということ。
“今の景気はいざなぎ超え” でも、世帯収入の中央値は32年前とほとんど変わっていません。詳しくはこちら↓https://t.co/3sr9T2mwm3 #nhk_news pic.twitter.com/wVlmxqziCq
— NHKニュース (@nhk_news) 2017年9月25日
中央値は21世紀になって500万円を割り込み、リーマン・ショックの2008年には427万円まで低下。その後民主党政権になって東日本大震災があったものの2012年までは432万円で維持していました。
しかし安倍政権が2012年12月に誕生し、2013年の中央値は415万円へと落ち込みます。2014年は427万円、2015年は428万円と微増しますが、3年経っても東日本大震災後の民主党政権最後の年のラインに戻すこともできていません。
これを裏付けるように、経済協力開発機構(OECD)は物価の影響を除いた各国通貨ベースでの実質賃金が、G7うち日本だけが2000年よりも低い水準に留まっていることを指摘しています。
◆政府の言う「好景気」は誰にとってのもの?
ではいったい、この景気回復を謳歌しているのは誰なのでしょうか?日経新聞は2018年1月の記事で「大企業の賃上げ率は4年連続で2%を超える」とし、「上場企業は18年3月期に2年連続の過去最高益を見込む」事を報じています。
そして財務省が9月3日発表した2017年度の法人企業統計によると、企業の蓄えた「内部留保」に相当する利益剰余金が、金融・保険業を除く全産業で前年度比9.9%増の446兆4844億円となって過去最高を更新しました。
内部留保が過去最高となるのは第2次安倍政権が発足した2012年度以降6年連続。製造業は9.1%増の153兆3205億円、非製造業は10.4%増の293兆1639億円で、ともに1割近く拡大しました。
そう、この内部保留の過去最高額連続更新が「戦後最長の景気回復」が始まるのと軌を一にしていることが明確に分かります。
そして、同時に企業の稼ぎを人件費に回した割合を示す「労働分配率」は2016年度の67.5%から2017年度は66.2%に下落。この割合はバブル期にも及ばず、43年ぶりの低さとなりました。
結局のところアベノミクスの6年間では、企業は大儲けしながら焼け太り、トリクルダウンは発生せずに国民の8割以上が不景気の中で苦しみ続けるという構図が強化され続けてきたことになります。
このまま口を開けて待っていたとして、果たして私たちの口にアベノミクスの果実は転がり込んでくることはあるのでしょうか?
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