従業員に払う金はなくとも、役員報酬には大枚をはたける大企業が多いようです。詳細は以下から。
◆「最賃アップは限界」という経団連会長発言
政府が毎年3%程度を目途に引き上げる方針を掲げている労働者の最低賃金。3%程度では全然足りないという人が多い中、日立製作所の会長でもある中西宏明経団連会長が「ここ何年か最低賃金を上げ続け、限界だという声もある」と発言したことが波紋を呼んでいます。
中西会長は定例会見で「世界と比べて相対的に低いという問題点は分かっており、上げていくことに反対ではない」と日本の賃金の低さを認識している事を明らかにしています。
しかし「ここ何年か最低賃金を上げ続け、もう限界だという声もあり、3%は多すぎるということだ。何をねらってどの程度やっていくべきか議論をしっかりすべきだ」として、最賃アップに慎重な姿勢を強調しています。
◆1億円以上の役員報酬を得る人が過去最高レベルに
そんな中で、大企業の役員報酬が高額化している事を伝えた赤旗新聞の記事が対比されています。
記事によると、2018年3月期に上場企業で1億円以上の報酬を得た役員が530人を超えて過去最高を更新しました。
その中でも中西会長の日立製作所では1億円以上の報酬を受け取った役員が7人から18人へと2倍以上の増加となっており、中西会長の報酬も2億4300万円だったとのこと。
この金額はかなり多いように思えますが、実はトップ100にすら入っていません。NEWSポストセブンの2018年12月の記事「高額役員報酬ランキング 1億円超えが22人の意外な企業は?」を見てみるとさらに興味深い事が分かります。
このランキングは2017年度(2017年4月期~2018年3月期決算)の有報を基に東京商工リサーチが行なった最新の集計によるもの。
その結果、1億円以上の役員報酬を得ていたのは704人で、前年度と比べて1億円以上の役員報酬を得ている人が98人も増加していました。100位ですら2億6800万円となっており、中西会長よりも2000万円以上高額です。
つまり経団連会長は、日本の企業が従業員の最低賃金を上げることは限界としながらも、役員報酬を高額化することにはなんら限界があるとは考えていない事になります。
◆内部保留は過去最高を6年連続で更新する一方、労働分配率は43年ぶりの低調
なお、財務省が9月3日発表した2017年度の法人企業統計によると、企業の蓄えた「内部留保」に相当する利益剰余金が、金融・保険業を除く全産業で前年度比9.9%増の446兆4844億円となって過去最高を更新しました。
内部留保が過去最高となるのは、第2次安倍晋三政権が発足した2012年度以降6年連続。製造業は9.1%増の153兆3205億円、非製造業は10.4%増の293兆1639億円で、ともに1割近く拡大しました。
ですが、企業の稼ぎを人件費に回した割合を示す「労働分配率」は2016年度の67.5%から2017年度は66.2%に下落。この割合はバブル期にも及ばず、43年ぶりの低さとなっています。
このように、企業側が政府からの賃上げ要請にも応じずに溜め込み続け、役員報酬ばかりを膨らませている構図が明らかになっています。
結局のところ、時給1300円という手取りの年収で言えば200万円少々のZOZOのアルバイトに募集が殺到するという現状では、毎年3%程度の賃上げでは焼け石に水でしかありません。
この状態で経団連会長が賃上げを渋るのであれば、景気の回復などは夢のまた夢でしかないでしょう。まずは「労働者=消費者」という資本主義の基本のキをしっかり学び直す必要がありそうです。
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