法務省が存在を否定したこの「見解」、いったいどこの誰がまとめたものだったのでしょうか?
◆産経新聞が存在しない法務省の「見解」を報道
問題になっているのはまとめサイト産経新聞が5月13日にネットに掲載し、14日朝刊にも掲載された記事「『三権分立に反しない』法務省、ネット批判に反論 検察官定年延長」(魚拓)とする記事。
これは先週末から全国的に批判の声が広がっている検察庁法改正案に対して法務省がまとめた見解を報じたとするもの。記事冒頭では
法務省は13日、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案をめぐり、ツイッター上などで広がっている批判に対する見解をまとめた。
(「三権分立に反しない」 法務省、ネット批判に反論 検察官定年延長 - 産経ニュースより引用)
として、法務省が主体となって見解をまとめたと明言しています。記事内では
「一般の国家公務員の定年引き上げに関する法改正に合わせて改正するものであり、黒川氏の勤務延長とは関係がない」「検察権行使に圧力を加えるものではなく、三権分立に反しない」「内閣等が自由に検察官を罷免したり、身分上の不利益処分を行うものではなく、身分保障を害することはない」
(「三権分立に反しない」 法務省、ネット批判に反論 検察官定年延長 - 産経ニュースより抜粋、引用)
などとした見解が引用の形で報じられていました。
ですが、これに対して共産党の山添拓議員が見解の全文を読みたいと法務省に確認を取ったところ、15日朝に「法務省の見解をまとめたものはない」と電話で回答が寄せられたことをツイートしています。
昨日の朝刊にも掲載されたこの記事。
— 山添 拓 (@pioneertaku84) May 14, 2020
いかなる見解か全文を読みたいと昨日法務省に問合せ、待ち続け、今朝になり「法務省の見解をまとめたものはない」と電話で回答。
審議の重大局面に、政府が関知しない「見解」が報じられるとは…?#検察庁法改正の強行採決に反対しますhttps://t.co/JViIHaZ5Fn
つまり、法務省が国会議員に対して正式に存在を否定した「見解」を、なぜか産経新聞だけが入手して報じていたことになります。いったいどこから出てきた誰の「見解」なのか大きな疑問符がつきます。
◆数々のデマを垂れ流してきた産経新聞
産経新聞がこれまでも数えきれないほどのデマを垂れ流してきた、まとめサイトレベルの報道機関であることはBUZZAP!でも繰り返し報じてきたとおり。
例を挙げると、「沖縄米兵の日本人救出報道」デマやダウンロード違法化問題での「安倍首相の『鶴の一声』」デマ、森友学園問題に絡む辻本議員へのデマ、都知事選での街頭インタビューでのデマ、SEALDsへのデマでのネガキャンなど、野党や野党支持者を叩く内容が多数。
加えて、「Galaxyは日本製スマホより品質は劣るが安い」とするモバイル絡みの韓国叩きや慰安婦問題、徴用工裁判、南京大虐殺などを巡る「歴史戦」など、その内容の幅広さと情報の信頼性の低さは他のジャーナリズムの追随を許さないレベルです。
そして今回は法務省という虎の威を借りたつもりが、当事者から見事にハシゴを外された形となっています。報道機関である以上、批判への反論があるならば堂々と社説で主張すればよかったはずですが…。
なお、検察庁法改正案と反対の広がりの経緯については以下の3記事で詳細に報じていますのでご参照ください。
「 #検察庁法改正案に抗議します 」ハッシュタグに470万件の声、なぜここまでの炎上が起こるのか | Your News Online
【ファクトチェック】「 #検察庁法改正案に抗議します 」に沸き上がった反論の妥当性を考えてみた | Your News Online
「黒川氏は68歳(2025年)まで検事総長として君臨できる」法務省が公式見解 | Your News Online
・関連記事
韓国の徴用工裁判を巡って日本政府と産経新聞が「歴史戦」開始、約束された敗北へ | Your News Online
産経新聞「安倍首相の『鶴の一声』で違法DL項目削除へ!」→菅官房長官「全く承知していない」 | Your News Online
産経新聞がデマを認め「沖縄米兵の救出報道 おわびと削除」を掲載も、記事を書いた高木桂一那覇支局長の名前はどこにもなし | Your News Online
「恫喝と圧力には屈しない」辻元デマに抗議した民進党に反論の産経新聞、デマだと発覚してもなお開き直る | Your News Online
「Galaxyは日本製スマホより品質は劣るが安い」産経新聞が衝撃的な珍説を披露 | Your News Online
あの産経新聞がやらかした「最もとんでもない誤植」とは? | Your News Online
【追記あり】産経新聞が新都知事に関する街頭インタビューでのネットデマを裏も取らず記事化→炎上して記事消し逃亡 | Your News Online
デマも捏造もなんでもあり、産経新聞のSEALDsネガキャンがあまりにもひどい | Your News Online
産経新聞に「ヘイトスピーチ」の意味を理解する能力は無いことが判明、国会前デモをデマで攻撃も | Your News Online