引責辞任する会長が後任を独断で密室で指名するという無理筋の極みに政府から横やりが入った形です。詳細は以下から。
女性蔑視発言で辞職する東京五輪組織委の森喜朗会長が11日、後任に元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏を指名し、川淵氏も承諾したと広く報じられていましたが、これを政府が問題視したことで白紙に戻りました。
川淵氏の後任としての指名は森会長が川淵氏を訪問して直々に依頼したもので、組織委としての正式なプロセスを踏んだものではありませんでした。
特に、川淵氏は組織委の評議員であって理事ではなく、定款の第23条の「理事のうち1名を会長とし、会長以外の理事の中から副会長、専務理事、常務理事を置く」とする規定に明確に反しています。
そのため、本来ならば川淵氏を理事に任命した上で会長として選出することが必要なはずですが、そうした全ての組織委としてのプロセスを飛ばして森会長が独断で指名しているのが実情です。
当然ながら、自らの発言で世界的な批判を浴びた会長が後任の指名に関わるというだけでも大問題であるにもかかわらず、組織委のあずかり知らないところで勝手に決め、しかも自らは相談役として残るのは「院政」で影響力を残そうとする利己的な行為と見られても致し方のないもの。
森会長はIOCのバッハ会長から「できたら女性会長を並列にしたらどうか」と提案されたものの「並列でやるほどくだらないことはない」と一蹴していたことは川淵氏が既に明らかにしているとおり。
また川淵氏は「菅さん辺りは、もうちょっと若い人いないか」と菅首相の意見についても触れていましたが、こちらも森会長がはねつけて川淵氏を独断で指名したことになります。
川淵氏が百田尚樹の「日本国紀」を絶賛していたり、「月刊hanada」の愛読者であると公言したり、体罰を肯定しているといった極右思想への親和性やオリンピック精神との乖離が今後問題になる可能性については昨日Buzzap!でも指摘したとおり。
ですがそれに加えて選出のプロセスや森会長が相談役と残るという事実などは世界から見れば「変わった感」の演出に過ぎないと見られることは確実。
今回の政府の介入はさらなる大炎上を避けるための緊急措置ということになりそうですが、それだけ組織委の後手後手ぶりが明確に晒されることとなっています。
【14:45追記】
森喜朗会長の後継候補として橋本聖子五輪相が浮上したと報じられていますが、橋本氏はフィギュアスケート男子の高橋大輔選手にキスを強要したとするセクハラスキャンダルの過去のある人物。
橋本氏は「キスを強制した事実はありません」とするコメントを発表し、高橋選手も「パワハラ、セクハラはない」としていますが、これ自体がパワハラによるセクハラの隠蔽と取られる可能性もあります。
また与党政治家で現職の閣僚という立場で五輪の代表となるという政治性にも疑念の目が向けられることにもなりかねません。オリンピック憲章には「オリンピズムの根本原則」として
5.オリンピック・ムーブメントにおけるスポーツ団体は、スポーツが社会の枠組みの中で営まれることを理解し、政治的に中立でなければならない。スポーツ団体は自律の権利と義務を持つ。自律には競技規則を自由に定め管理すること、自身の組織の構成とガバナンスについて決定すること、外部からのいかなる影響も受けずに選挙を実施する権利、および良好なガバナンスの原則を確実に適用する責任が含まれる。
と記されています。橋本五輪相がこれに抵触するのかについても議論となりそう。
まだまだ泥沼のごたごたが続きそうですが、残された時間は少なく、新型コロナの収束もまったく見えていないのが現状です。
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