「子供を最低3人くらい産むように」桜田前五輪相の発言が「正解なのに大間違い」の理由



少子化は子供が増えなければ絶対に解消されません。ですが桜田前五輪相の発言は完全な大間違いです。どこがどう間違っているのでしょうか?詳細は以下から。


◆失言王桜田前五輪相が少子化問題でまたもや失言
これまで数々の失言・暴言を吐き続け、最終的に4月10日に「復興よりも議員が大事」とする発言で五輪相を更迭された自民党の桜田義孝議員。

こうした状況を受けて、自民党は5月に入っていわゆる失言マニュアルを作り、同党議員に配布するという異例の対応まで迫られていました。

ですが、5月29日、桜田議員は千葉市で開かれた同党議員の政治資金パーティーで、「結婚しなくていいという女の人が増えている。お子さん、お孫さんには子供を最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」と発言。


当然ながらこの発言は大炎上しており、桜田前五輪相は「子供を安心して産み、育てやすい環境を作ることが重要だとの思いで発言した。それを押し付けたり、誰かを傷付けたりする意図はなかった」と釈明したものの鎮火するはずもありません。

◆言っている事自体は間違いとは言えないが…
桜田議員のこの発言、激烈な反応を引き起こしていますが、内容として大きな間違いがあるという訳ではありません。

急激に少子高齢化の進む日本では、この傾向に歯止めを掛ける事が極めて重要である事は言うまでもありません。そして数字の上では、日本の人口が増えるためには各夫婦が3人以上の子供を産むことが必要となります。

では、いったい桜田議員の発言のどこが大間違いで大問題なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

◆少子化対策は夫婦ではなく政府の仕事
まず、桜田議員は更迭されたとはいえ閣僚経験者の与党国会議員です。つまり、少子高齢化問題という国家存亡の危機に対して誰よりも責任のある立場の人物です。

であれば、この問題について国民にお願いをする以前にまずは政府与党として「子供を産んで頂けるような環境を整える」責務があります

しかもこのお願いは1人ではなく「最低3人くらい」産むようにというもの。産む女性からすれば妊娠・出産という身体のリスクはもちろん、育児費用も1人の時の3倍掛かりますし、育児をしながらの就労もより困難になることは間違いありません。

◆結婚・出産に至るまでの高すぎる経済的ハードル
総務省が2月18日までに発表した2018年労働力調査「2018年平均速報値」によると、役員を除く雇用者5596万人のうち、正規雇用者3476万人、非正規雇用者2120万人となり、非正規雇用者が占める割合が37.9%となっている事が判明しました。

総務相の労働力調査で初めて非正規雇用者が初めて2000万人を超えたのは2014年のこと。当時BUZZAP!でも詳しく報じましたが、この時の非正規雇用者数は2012万人で、割合も38%と今に至るまで高止まりとなっている事が分かります。

また2017年に国税庁の民間給与実態統計調査で非正規の平均給与は172万円で正規より315万円低く、4年連続で格差拡大中であることが明らかにされました。

さらにSMBCコンシューマーファイナンスが3月6日に発表した30~40代の金銭感覚に関する調査結果によると「現在の貯蓄額がゼロ」と答えた人が前年比6ポイント増の23.1%になり、平均貯蓄額も同52万円減の195万円に低下しています。

つまり、低賃金の非正規雇用者の割合が多く、恋愛から結婚・出産に至る時点でのハードルが極めて高くなっていることが分かります。


加えて2017年には過労死ライン超えの残業100時間が合法化されており、そもそもの恋愛をする時間や気力・体力さえもが奪われているのが現状です。

◆育児・教育にはさらなるハードルが
また、当然ながら子供は産んだら終わりではありません。子供は大人になるまでの育児と教育が必要となりますが、そこにも多くの問題が横たわっています。

1人の子供を大学卒業となる22歳まで育てることを考えた時の教育費と養育費の合計は、全てを国公立の学校に進学したと考えても2500万円を超え、全て私立に進学した際には4000万円を超えます。

よって、桜田議員のお願いする3人の子供を産み育てた場合には最低でも7500万円、場合によっては1億2000万円が必要な計算となります

果たして低賃金の非正規雇用が横行する現在の日本で、どれだけの若者たちがこれだけの費用を捻出することができるのでしょうか?


また子供が産まれれば育児休暇を取ったり保育園に入れる必要がありますが、現時点でも育児休暇を取るのが困難なケースもあり、保育園に全員が入れる状況も作られておらず、女性が職場復帰する際のハードルも高いままです。

先日はG7で日本だけが2000年よりも賃下げとなっているにも関わらず、経団連の会長日商の会頭が共に最低賃金アップへの反対を口にしたことが大きな反響を呼びました。

また消費税の10%への増税も目の前となっており、金融庁が老後には年金だけでは生活費が月5万円、総額1300~2000万円程度不足するとして国民に「自助」を呼びかけました

国民に「子供を最低3人くらい産むように」とお願いをする以前に、まずは政府与党が責任を持ってこうした問題を解決し、「子供を安心して産み、育てやすい環境」を作り上げる必要があります。

少子化問題で結婚しない女性を責める前に、まずは与党の国会議員としての責務を果たさなければ、職務放棄とされても仕方がないのではないでしょうか。

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