犯行当時、維新の会に所属していた山田豪常滑市議が大村知事リコール運動での署名偽造に深く関与していたことを認め、議員辞職しました。
しかも、当時維新の会の愛知県第5選挙区支部長で衆院選予定候補でもあったリコールの会の田中事務局長の指示によるものだったことを明言しています。詳細は以下から。
◆元維新市議が偽造署名関与認め辞職
中日新聞が議員辞職を報じたのはリコール運動の請求代表者に名を連ねていた、常滑市会議員を務める維新の会(当時)の山田豪氏。
山田市議はリコール運動の活動方針の決定に関わったり、街頭演説で署名を呼び掛けるなど田中事務局長と共に中心的な役割を担ってきました。事務局関係者が署名偽造とのかかわりを認めるのは初めてのこと。
山田市議は2月28日付で維新の会に離党届を提出して受理されていましたが、4月15日に一連の問題の責任を取って議員辞職しました。
山田市議は中日新聞の単独インタビューに「偽造署名に深く関与した」と認めた上で「田中孝博事務局長の指示で昨年10月末~11月上旬、名古屋市内で同一筆跡の大量の署名簿に自ら指印を押した」ことを明らかにしています。
中日新聞はその指示の様子を生々しく伝えています。
「ミスター、こうやってやるんだ」
昨年10月29日午後7時ごろ、名古屋市内の公共施設。山田氏によると、田中事務局長は椅子に座ると、おもむろに五本の指に赤いインクを付け、手本を見せるように次々と署名簿に指印を押していった。田中事務局長は山田氏のことを「ミスター」と呼んでいたという。
(「ミスター こうやるんだ」 リコール事務局幹部の常滑市議証言:中日新聞Webより引用)
中日新聞によると山田市議は「押印のない大量の署名が送られてくる」ことを田中事務局長から知らされており、これが名古屋市内の広告代理店の関わった「水増し署名」だったことも聞き及んでいます。
その上で田中事務局長から「九州から運んできた」ことまで聞かされており、先日判明した発注書への田中事務局長のサインと押印を考えれば、事務局が組織的に関与していた実態が浮き彫りとなります。
繰り返しになりますが、犯行当時維新の会の愛知県第5選挙区支部長で衆院選予定候補でもあったリコールの会の実務トップの田中事務局長が、請求代表者でもある同じ維新の会の現役市会議員だった山田豪氏に署名偽造という重大犯罪を直接指示したことになります。
ということで、維新の会音喜多駿参議院議員の主張していたような「維新が組織としてこのリコール運動に関与したことはありません」という論法は完全に崩れ去ったことになります。
◆人、モノ、カネの流れと維新の関与の有無について
・署名偽造のバイト代はどこから出た?
署名偽造が田中事務局長個人の犯行ではないことが明らかになったことで、維新の会の関与について再度確認すべきことがいくつかあります。まずは署名偽造の発注書に明記された474万6500円の出どころ。
事務局が3月30日、愛知県選管に政治資金収支報告書を提出した際の記者会見で田中事務局長は「事務局として、リコールの会として関わったことは絶対ありません」と明言。
署名偽造した広告会社への支出が含まれていないかとの問いに「お答えは控えさせていただきます」と回答を拒否したものの…。
「僕の記憶では(支出に)1円も入っていない」としています。
中日新聞による会見の動画は以下から。
田中事務局長の言葉が正しく、広告会社への支出がリコールの会の財布から出ていないならば、実際にバイト代が支払われている以上、どこか別の財布から出たことになります。それが田中事務局長個人のポケットからなのか、それともまた別の財布からなのかが問題になってきます。
・あの選挙カーの画像は本物?
またネット上では、維新の会の選挙カーがリコール運動の街宣車として流用された疑惑が画像付きでささやかれていました。
当該画像では名古屋ナンバーのホンダの軽が映っており、いずれも同ナンバーでリコール運動の街宣車と維新の選挙カーとして利用されているように見えます。変わっているのは上部のバナーのみで後はすべて同じ。
「む」ナンバーのためレンタカーではないと推測され、これがコラ画像でなければ、維新の選挙カーをリコール運動に貸し出した「証拠」ということになってしまいます。
加えて、この車両が政党の所有物であれば個人では勝手に動かせないはずで、党全体か愛知県の支部かといった差はあれど、何らかの形で維新が組織的に関わっていたことになります。
現役市議が署名偽造という暗部にまで関与していたことから、人員や資材、自動車や場所などの提供に維新の会が関与していたかを再度洗い直す必要があります。
・名古屋市以外の名簿はどこから出てきた?
加えて、署名偽造に使われた名簿の問題も関係してきます。河村市長の事務所から過去の住民投票の際の名簿3万人分が貸し出されたことは既に本人の口から証言されていますが、これは基本的に名古屋市内のみのもの。
それ以外の市町村の名簿の出どころはどこなのか、山田市議の事務所から何らかの名簿が貸し出されていた可能性も再度検証する必要が出てきます。
とはいえ「現役市議や支部長とはいえ、維新の会愛知のメンバーがたまたま複数個人的に関わっていただけではないか」との見方もあるかもしれません。ですが、リコール運動のツートップ、高須院長と河村市長のいずれもが維新の会とは深い関りがあります。
◆吉村大阪府知事の高須院長への熱烈な「応援」
まず維新の会副代表の吉村大阪府知事は高須院長を「高須先生」と呼び、高須院長も吉村府知事を「盟友」と呼ぶ間柄なのはツイッターユーザーには有名な話。
2019年に吉村知事は「高須先生の枕をゲットした、なう」と大喜びの動画もアップしています。
2020年6月1日にはリコールの会発足会見に誘われ、公務のため出席できないとしながらも「リコールは簡単にはいかないと思いますが、応援してます、なう。行政が税金であの『表現の不自由展』はさすがにおかしいですよね」と応援を明言。
10月12日には高須院長からのエールに「YES!高須先生!今日から大阪では都構想の住民投票が始まりました。最後まで頑張ります。高須先生も最後まで頑張って下さい!」と返答しています。
これをあくまで個人間のつきあいだとする意見もありそうですが、トランプ前大統領のツイートを思い出すまでもなく、公認マークの付いたツイッターでの大阪府知事の発言は公人の公式発言と捉える以外ありません。
◆河村市長の減税日本と維新の会は5年に渡る選挙協力
一方で、リコール運動の「応援団長」でもある河村市長の率いる地域政党減税日本と維新の会には強い協力関係があります。
2019年の参院選では、日本維新の会と減税日本は共同で新人候補の岬麻紀氏を擁立しています。岬氏は田中事務局長と並んで愛知県の所属議員一覧に「選挙区支部長」と掲載されています。
岬氏の立候補の際の選管への届け出政党は減税が維新の求めに応じて「維新」としたものの、根強い河村市長人気を生かすために選挙ポスターは岬氏と河村市長のツーショットです。
蛇足となりますが、岬氏もあいちトリエンナーレの問題に強い不快感を示し、高須院長と河村市長の写真をFacebookに掲載しています。
なお2016年の参院選でも減税日本はおおさか維新の会(当時)と共同で奥田香代候補を擁立しており、この際は届け出政党は減税日本でした。
中日新聞はこの記事の中で「今回も河村市長は当初、減税で届け出るつもりだったが、維新の下地幹郎衆院議員や愛知の維新関係者が説得した。本拠地の大阪以外に勢力を広げたい維新。愛知選挙区の候補の看板を維新にし、比例票発掘につなげる思惑もあった」と、維新の愛知への勢力拡大の意図があったことを指摘しています。
また署名偽造で主導的な役割を果たした田中事務局長も2019年に減税日本公認候補として愛知県議会選挙に立候補(落選)しており、選挙公報には「河村市政と愛知県政をつなぐ男」「河村たかし猛烈応援!」の文字が踊っています。
その後田中事務局長が維新の会愛知県第5区選挙区支部長となり、本来であれば日本維新の会から次期衆院選に立候補する予定だったことを考えれば、両党の協力関係が極めて密で強固なものであることが分かります。
ということで、当時維新の会に所属していた選挙区支部長と現役市議が署名偽造に深く関与していたことが確定し、経緯を見れば無根拠に「維新の会に所属していた個人が党とは関係なく勝手にやっただけ」と知らぬ存ぜぬで通せる状況ではありません。
リコール署名偽造が民主主義の根幹を破壊する極めて重大な犯罪である以上、維新の会がどのように、どこまで今回の運動に関わったのか、関わっていなかったのかを明らかにする必要がありそうです。
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